最貧困から最先端へ~中国・貴州省の奇跡(上) 基礎設施(インフラ) 「データは石油」が原動力

西日本新聞 国際面

貴安新区の完成予想模型のそばで説明を受ける見学者。海外からの視察も多い 拡大

貴安新区の完成予想模型のそばで説明を受ける見学者。海外からの視察も多い

貴州省の地図

 米中貿易摩擦が焦点となった6月末の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)で安倍晋三首相は国境を超えたデータ移動のルール作りを提唱し、各国の了解を取り付けた。論議の中で最も注目されたのが習近平国家主席の発言だった。

 「データは石油だ」。今の世界経済を動かしているのはデータであり、かつての石油と同じ。それなのに中国を代表する情報通信企業、華為技術(ファーウェイ)は米国市場から締め出されている。習氏はそれを念頭に「公平で差別なき市場が必要で、人的介入は許されない」と強調したのだ。トランプ大統領に対するけん制と同時に、情報通信の主導権は中国が握るという決意とも受け止められた。

■2年連続1位

 その世界的な拠点が中国南西部の山間地、貴州省に突如として現れた。習氏は2013年、国家主席に就任すると翌14年には省が打ち出していた省都貴陽市と安順市にまたがる直轄自治体「貴安新区」構想を産業新区として承認。それからわずか5年で中国ITの騰訊控股(テンセント)やネット通販のアリババなど国際企業が競うように進出し、従来のソフトウエアでは対応できない巨大で複雑なビッグデータを処理し、活用する企業の集積が進む。

 省によると、省別の経済成長率で17年から2年連続、全国トップになった。中国で最も貧しい省とされてきたが、1日の収入2ドル以下の「貧困人口」はこの4年間で省の人口の18%から4%に激減したという。

■内陸部の未来

 6月半ば、福岡から経済視察団が貴州省を訪れた。同行した宮本雄二元中国大使は「貴州省は本当に貧しかった。でも素朴で柔軟な人が多い。だからこそ急速な変化に対応できている」と語る。将来、中央政府に進むと目されている有力者、孫志剛同省共産党委員会書記は一行と会見し、「成功の原動力は豊かな自然環境と中央政府による基礎設施(インフラ)の集中投資だ」と力説した。

 貴州省には北京や上海が失った澄んだ大気と豊富な水資源がある。ビッグデータ処理の最大のコストはフル稼働するコンピューターを冷やす電気料金。内陸部の高地で年平均気温15度と夏も冷房なしでも過ごせる気候、安価な水力発電の比率の高さは企業にとって魅力的だ。道路、鉄道、空港を一体的に運用する高速交通網も築かれている。

 中国にさまざまなデータが集中することは安全保障にも関わるとの懸念もある中、データ関連産業を基盤にした新たな未来モデルが育っている。

   ◇    ◇

 山間部の貧困地域が情報通信の先端地域へ。その躍進ぶりが海外からも脚光を浴びる貴州省の今を報告する。

貴州省】北は四川省、重慶市、東は湖南省、南は広西チワン族自治区、西は雲南省に囲まれた山間地帯だが、雲南省に向かって標高1000メートルの高原が広がる。北京からは空路3時間超。華為技術の創業者、任正非氏は貴州省出身。

PR

PR

注目のテーマ