最貧困から最先端へ~中国・貴州省の奇跡(下) 生態文明(エコ社会) 豊かな自然 技術発展支え

西日本新聞 国際面

 「生態文明建設を新段階に引き上げよ」。中国の習近平国家主席は昨年5月、貴州省で開かれた国際環境シンポジウムに寄せたメッセージに、こうした国家スローガンを盛り込んだ。

 生態文明とは、大都市の大気汚染や水質汚濁にストップをかけ、環境に配慮した未来社会のこと。「澄んだ水と青い山こそが富を生む」「良好な環境は普遍的国民生活の福祉」など六つの原則があり、そのモデル地区、貴州省に対する評価がメッセージに反映された。廬雍政副省長は「われわれは環境を守りながら経済発展を実現している。大気、水質とも国内最高水準です」と胸を張る。

■佐賀との交流

 先端の情報通信産業を促進する一方で、健康産業や観光開発に取り組むのも生態文明の一環だ。その拠点が省都貴陽市の烏当区。4千年の歴史を誇る地元の少数民族ミャオ族の薬草を分析して次世代の漢方薬作りに結び付ける試みが始まっている。また、温泉に恵まれているため、日本の掘削会社が試掘して事業化を進めようとしている。

 貴州省は約20年前から佐賀県と交流してきた。今のように内外から注目される前から造林、造園、農業などで地道な技術交流を積み重ね、昨年には有力者の孫志剛省共産党委員会書記が佐賀県を訪問し、交流の幅を広げる。烏当区の李成区長は「自然や地域の食文化を活用する九州の温泉観光を学びたい」と言う。

■「知行合一」掲げ

 昨年10月、貴陽市に日本の外食大手ゼンショーが牛丼店「すき家」を開店させた。上海では300店を超す人気チェーン店の進出とあって話題になっていた。牛丼1杯16元(約250円)は、地元の物価や賃金水準からみて安くはないという。最貧地区から脱皮しつつあるとはいえ、日本の牛丼店の広がりは豊かさの指標の一つかもしれない。

 国の重要文化財に指定されている貴陽市観光のシンボル、甲秀楼を訪ねた。入り口に「貴陽市市民公約」を掲げた看板があり、最初に「知行合一(ちぎょうごういつ)」を挙げていた。行動を伴わない知識は意味がないという陽明学の根本だが、その思想を起こした明時代の学者、王陽明はこの地方に幽閉されていた時期があり、地元の人に敬愛されている。

 中国で最も貧しかった貴州省がどう変わっていくのか。最先端技術による発展と環境保護の両立を目指す「知行合一」は中国の未来に関わる試金石でもある。

【貴州省の自然】省内で最も大きな川、烏江は重慶で長江と合流する。植生は照葉樹林帯で茶の産地。コーリャンを主原料とする高級酒「マオタイ酒」で知られる。原始林が茂る梵浄山は弥勒菩薩(みろくぼさつ)の聖地とされ、昨年、世界自然遺産に登録された。

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