留学生と共栄目指す 杏林国際語学院理事長の山渋久美子さん

西日本新聞 筑後版

山渋久美子理事長(左端)と教職員たち 拡大

山渋久美子理事長(左端)と教職員たち

長崎市の平和公園を訪れた5月の研修旅行

 ベトナム、ネパール、インド、スリランカなどアジア諸国の留学生約160人が学ぶ小郡市小郡の日本語学校「杏林(きょうりん)国際語学院」。理事長の山渋久美子さんは毎朝、登校する生徒に「おはよう」と声を掛ける。生徒たちの表情を見て、病気や心配事がないか確かめるためだ。「ここで学んで幸せになり、日本人からも愛される道を開く。教える私たちには責任がある。一人一人と向き合い、孤立させてはいけない」

 東京都出身、上智大卒。テレビ局に5年間勤務した後、外国人対象の日本語教師となった。横浜市に住んでいた2011年、福岡市の日本語学校相談役への就任を請われて福岡市へ移り住んだ。だが、資金流用や書類改ざんなど不適切な学校運営の実態を目の当たりにした。

 「自分たちで学校をやるしかない」。そう決意し、15年10月、元同僚数人と学院を設立した。元歯科技工士養成所の物件を買い取り、壁や床は自分たちで塗った。

 3カ月ごとに新入生を受け入れ、1年3カ月~2年間、日本語を教える。入学後はまず日本の生活習慣や身だしなみを教える。「こちらから『こんにちは』とあいさつすれば、日本人も警戒心が薄らぐ」。学校ぐるみで地域に溶け込む努力を続け、生徒は住民から祭りや花見にも呼ばれるようになった。

 入学直後、生徒を連れて長崎へ研修旅行に行く。「日本を何も知らない留学生たちも、原爆が投下された広島、長崎の存在は知っている」。爆心地近くの長崎原爆資料館で被爆の実相を伝える展示を前に、新入生たちは一様におびえた表情を見せる。豊かで明るい米国というイメージが揺らぎ「気持ちが少し変わった」と話す生徒もいるという。

 4月の改正入管難民法施行で、外国人労働者の就労拡大が見込まれる。日本での就労を目指す留学生たちにも進路選択などで影響が及ぶ。だが「学費目当てに留学生獲得に血眼になっている大学や、親身になって支援せず逆に利用しようとする人が多く、恥ずかしい」と嘆く。留学生を働き手とみなして囲い込みを図る事業者に対しても「出稼ぎ労働者じゃない。進学し、母国との懸け橋として働きたいと願う苦学生を、勉強に専念させてほしい」と憤る。

 「中国の故事にあるように苗木が『杏(あんず)の林』に育つよう、日本人が留学生に愛を与え、互いに栄えることを目指したい」と山渋さん。間もなく次の新入生約40人を迎える。

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