ミャンマー、ネット遮断1ヵ月 少数民族と国軍衝突の州

西日本新聞 国際面

 【バンコク川合秀紀】ミャンマーの一部の州で今年6月から、政府の指示によって携帯端末のインターネットサービスが停止されている。対象は自治権拡大を求める仏教徒の少数民族ラカイン族の武装組織と国軍が激しく衝突している地域で、人口は100万人以上とされる。ネットが停止されて21日で1カ月。政府による「情報遮断」に国内外の批判が強まっている。

 ミャンマーで通信サービスを展開するノルウェー企業テレノールによると、ミャンマーの運輸通信省から6月20日、「平和を妨げる混乱と違法行為を調整するため」として、西部ラカイン州の一部とチン州の一部の携帯ネットサービスを翌21日夜から停止するよう指示を受けた。

 同社は通話とショートメッセージを除き、会員制交流サイト(SNS)などのサービスを遮断。同社によると、他の通信会社も同様の指示を受けており、遮断は現在も続いているもようだ。政府はサービス再開の見通しを示していないという。

 ラカイン州では2017年、イスラム教少数民族ロヒンギャの武装組織と国軍が衝突し、約70万人が難民としてバングラデシュへ流出。今も帰還できていない。さらに今年に入ってラカイン族の武装組織と国軍の衝突も激化した。ネット遮断には「混乱する地域の情報を国内外に拡散させたくない政府側の狙い」(地元紙記者)がうかがえる。

 一方、国軍はネット遮断への関与を否定しているが、ミャンマーの人権状況を調査する国連特別報告者の李亮喜(イヤンヒ)氏は欧米メディアのインタビューなどで「ネット遮断の裏側で国軍が市民の人権を侵害している恐れがある」と憂慮を示した。ロイター通信によると、米国務省も「深い懸念」を表明し、ミャンマー政府に早期再開を求めている。

 英字メディアのフロンティア・ミャンマーは「ネットを使った送金や取引、情報発信ができず、市民や非営利団体などの活動に支障が出ている」と指摘。ラカイン族の民族政党所属の国会議員も「政府に対する市民の信頼にも悪影響が及ぶ」と批判している。

 ▼ラカイン州の情勢 ラカイン州はミャンマーで最も貧しい地域の一つ。仏教徒の少数民族ラカイン族が2009年、自治権拡大や格差是正を求めて武装組織「アラカン軍」を設立し、国軍と衝突を繰り返している。国軍はほかの州の少数民族武装勢力とは停戦交渉を進めているが、アラカン軍は除外。今年1月にアラカン軍が警察署を襲撃するなどして衝突が激化している。国軍は州内のイスラム教少数民族ロヒンギャの武装勢力とも依然、戦闘状態にあるとしている。

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