内容把握し不必要な登録しない 森井昌克氏

西日本新聞 オピニオン面

神戸大大学院工学研究科教授森井昌克氏 拡大

神戸大大学院工学研究科教授森井昌克氏

◆スマホ決済の光と影

 セブン-イレブンのスマートフォン決済「7pay(セブンペイ)」に不正利用が発覚し、開始早々4日目に事実上、利用停止に追い込まれた。セブンペイのセキュリティーに不備があったことは否めないであろう。昨年末にも「ペイペイ」と呼ばれるスマホ決済が、不正利用の被害を受け大きな問題となり、スマホ決済各社がセキュリティーを強化した経緯がある。

 なぜスマホ決済を急ぐのか。それは世界各国のキャッシュレス化の流れが原因である。わが国のスマホ決済を含むキャッシュレス決済の比率は2割前後であり、他国に比べて圧倒的に少ない。実は現金決済のコストは非常に高く、貨幣や紙幣の製造、運搬、運用費用は年に数兆円を優に超えるといわれる。決済の透明性がさらに図られ、徴税にも利用できるという政府の思惑もある。利用者側ではスマホアプリだけ、店舗側もQRコードを表示し、読み取れさえすれば可能なスマホ決済は普及を後押しする。

 現在、主なものだけでも20社以上のスマホ決済方式が存在する。乱立する理由は決済情報を得たいがためである。セブンペイであれば系列コンビニや店舗で何をいつ購入したかという情報が得られ、それを次のビジネスにつなげることが可能となる。さらに自社の系列以外での利用を促進させることによって、大きな顧客情報を得ることになる。

 スマホ決済会社は、セブンペイの不正利用を受けて、セキュリティー管理をさらに厳格にするであろう。しかし安全な方式を実現することは難しい。現金取引でさえ、安全と錯覚しているものの、実は詐欺等さまざまな不正利用が存在する。現金取引は100年近くの歴史があり、慣れているだけである。セキュリティーをいかに強固なものとしても、利便性を損なうばかりか、慣れない人間の脆弱(ぜいじゃく)性を突いた不正利用が増加するであろう。遠くない将来、キャッシュレス決済が主流になり、現金決済自体が珍しい時代が来る。だがそれはスマホ決済とは必ずしも限らない。

 スマホ決済の不正利用被害対策は、その一つ一つの決済内容を把握することが第一である。それは無意識に財布の中身を調べることに通じる。第二は不必要にスマホ決済アプリを導入しない、つまり登録しないことである。おにぎり一個欲しさに10万円が消えることも有り得るのだ。

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 森井 昌克(もりい・まさかつ)神戸大大学院 工学研究科教授 佐賀大を経て、1989年、大阪大大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了。工学博士。情報通信工学、サイバーセキュリティー、情報理論等の研究、教育に従事する。

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