「出産時にリスク」 懸念の声 輸血用血液製剤 中核病院での備蓄制度廃止 九州の診療所 輸血まで長時間も 日赤「安定供給に尽力」

西日本新聞 医療面

日赤九州ブロック血液センター(福岡県久留米市)で製造され、九州各地に送られる輸血用血液製剤 拡大

日赤九州ブロック血液センター(福岡県久留米市)で製造され、九州各地に送られる輸血用血液製剤

 大量出血などで輸血が必要になったときのため、輸血用血液製剤を中核病院で備蓄し、周辺の診療所などに譲渡する制度が4月、廃止された。血液製剤を製造販売する日本赤十字社(東京)が「医薬品販売業の許可を受けた者以外の販売や貯蔵などを禁じる医薬品医療機器法との整合性に疑義がある」と判断したからだ。離島やへき地の多い九州では、輸血の必要性が高い産科などで制度に頼ってきており「出産のリスクが高まる」と懸念の声も上がっている。

 血液製剤は献血から作られ、成分によって「赤血球製剤」(有効期間採血後21日間、1万7726円)、「血漿(けっしょう)製剤」(同1年間、1万7912円)などがある。日赤によると、有効期間が短く、緊急に必要になることから、交通の不便な地域で少なくとも1960年代からこの備蓄医療機関制度が「イレギュラーな運用」として定着していた。

 日赤によると、昨年6月時点で全国21県の59機関(うち九州・沖縄は全8県の25機関)が備蓄。大分、長崎各6▽熊本4▽佐賀3▽宮崎、沖縄各2▽福岡、鹿児島各1と、離島やへき地が多い県に集中していた。

 日赤は昨年6月から制度廃止を周知し、今年4月に廃止。九州では現在、日赤の供給施設(各県1~3カ所)の血液センターなどから直接配送している。法令違反の恐れに加え「医療機関の役割分担も進み、貴重な献血を有効活用したい」とする。

 特に需要が大きかったのは、妊産婦の死因1位の「産科危機的出血」。妊産婦300人に約1人の頻度で起こり、緊急輸血や高度施設への搬送が必要となる。

 ところが、制度廃止で輸血までの時間が延びる地域がある。年間約900件の出産がある熊本県人吉・球磨地区では、JCHO人吉医療センター(人吉市)が備蓄していた。同市の愛甲産婦人科麻酔科医院では2018年は出産436件中1件、17年は同504件中9件で輸血が行われ、大半は備蓄分が使われた。これまで、医療センターから運ぶと30分以内で輸血できたが、熊本市からの配送を待つと1時間以上かかる。

 有効期間が短い製剤を購入して常備するのは経営的にも厳しく、愛甲啓院長(41)は「輸血は生命線。リスクが大きくなると、地方で産科をやめる所も出るかもしれない」と懸念。医療センター産婦人科の大竹秀幸部長(55)も「助かる命は確実に助ける体制が必要」と訴える。

 大分県日田市の宮原レディースクリニックは17、18年の2年で出産が計859件あり、輸血は10件。済生会日田病院の備蓄のおかげで約30分で輸血できたが、大分市から運ぶと2時間近く、最寄りの福岡県久留米市からでも1時間はかかるという。宮原英二院長(63)は「夜間や休日のリスクが上がる」と危ぶむ。

 日赤は配送回数を倍以上に増やし、臨時配送体制も整備。「これまで廃止に伴う大きな問題はなく、患者への影響が出たという報告もない」とし「安定供給に努め、懸念を払拭(ふっしょく)できるように説明していきたい」としている。

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