1強高揚感なき勝利 12年前の惨敗払拭 「選挙の顔」巧みな戦略

西日本新聞 社会面

 令和最初の国政選挙で、民意は静かに「1強政治」を信任した。21日投開票された参院選は与党が勝利。安倍晋三首相は引き続き強固な政治基盤を維持し、11月には歴代最長政権を見据える。だが、宿願の憲法改正に前向きな改憲勢力は全議席の3分の2を割り込み、国会発議は厳しさを増した。増税、年金、子育て…。生活への不安は消えないが、各地で大荒れとなった天気も影響してか有権者の半数は投票所に足を運ばなかった。熱なき視線が注がれる中、この国の政治は「安定」の先にどんな社会を描くのか。

 「政治の安定か混乱を問うた選挙。政策を前に進めていく」。21日午後10時すぎ、自民党本部。トラウマとも言える亥年(いどし)の参院選を制した安倍首相は、テレビカメラの前で穏やかな表情を見せた。

 午後9時45分ごろ、明るい紺色のスーツで党本部の開票速報会場に姿を見せた。コップの水を一口飲み、候補者名が並んだボードに当選確実のバラを付ける。落ち着いた自然な笑顔。2度応援に入った激戦区の青森で、公認候補の当選確実が出ると「おー青森」と喜んだ。

 政権交代につながった12年前の惨敗を胸に臨んだ。街頭で「私の責任」と反省を語り「令和の時代で逆戻りしてはいけない」と訴えた。政権に返り咲いた2012年から国政選挙6連勝。「選挙の顔」として面目を保った。

 その戦略は巧みだった。野党が改選1人区の候補者調整で難航していると見るや、衆院の「解散風」をたき付けて揺さぶった。ハンセン病元患者家族訴訟で国が敗訴すると、「異例の判断」で控訴を見送り、政権批判の芽を摘んだ。

 テレビ中継では椅子に深く座り、矢継ぎ早の質問にリラックスした様子で応じた。衆参同日選については「迷わなかったと言えばうそになる」。先送りした衆院解散の時期は「あらゆる選択肢がある」と言質を与えなかった。

 もっとも「政治の安定」を掲げた選挙戦では、長期政権の締めくくりを意識するかのような発言もあった。14日の広島市での演説では「令和の時代は岸田さんだ」と述べ、「ポスト安倍」をうかがう地元選出の岸田文雄政調会長を持ち上げてみせた。

 3期目となる党総裁任期は21年9月まで。「1強」の余裕なのか、3日の党首討論では「次の選挙の時、私は自民党総裁ではない」と4選を否定した。この日も4選への意欲を問われ「全く考えていない。残りの任期、全力を傾けて結果を出したい」とかわした。

 悲願の憲法改正も意欲をにじませ「ちゃんと議論すべきではないかという国民の審判だった。少なくとも議論していけという国民の声をいただいた」と述べつつも、憲法9条への自衛隊明記の必要性は強調しなかった。

 公明党の慎重論や野党の抵抗の中で、改憲論議を進める難しさを自覚しているのか。「国民的な関心はまず社会保障をしっかりしてもらいたい、景気をよくしてもらいたい、ということなんだろうと思う」。少し弱気がのぞいたようにも見えた。

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