長野側から県境の旧碓氷峠を越えて群馬側に少し下ると「一つ家(や)の碑」と呼ばれる風変わりな歌碑がある…

西日本新聞 オピニオン面

 長野側から県境の旧碓氷峠を越えて群馬側に少し下ると「一つ家(や)の碑」と呼ばれる風変わりな歌碑がある。<八万三千八 三六九三三四七 一八二 四五十三二四六 百四億四六>

▼数字でつづられた歌は「山道は 寒く寂しな 一つ家に 夜毎(よごと)身にしむ 百(もも)夜置く霜」と読むそうだ。奥州を目指して逃れる源義経に従った武蔵坊弁慶が胸中を詠んだものとも伝わる

▼平成から令和へと時代の峠を越えて初めての参院選が行われた。有権者は1億658万7979人。<一六五八七九七九>は「1票の向こうは涙と苦労がなくなる時代」と読みたいが

▼投票所に足を運んだ人たちは夜毎身にしむ不安を胸に、明日への希望を1票に託した。福祉、年金、医療、教育、景気、防災、安全保障…。国政への期待にどう応えるか。弁慶の七つ道具のごとく当選者は肩に重い責任を負う

▼今回は370人が立候補し124議席を争った。非改選者を含めた参院の総定数は245に。<三七〇一二四二四五>。良識の府を担う人は「参院がなすはひとえに世に役立つ仕事」と肝に銘じるべし

▼義経主従は安宅の関で怪しまれ窮地に。弁慶は白紙の巻物を勧進帳と偽って朗々と読み上げ、関守を欺いた。では、各党党首や候補者が朗々と語った公約の「勧進帳」は本物か。票を得るための“歓心帳”ならば、超少子高齢社会の関は越えられぬ。関守の国民も見逃してはなるまい。

PR

PR

注目のテーマ