【福岡コンフィデンシャル】担当記者が参院選振り返る

西日本新聞 ふくおか版

 21日投開票された参院選福岡選挙区(改選数3)では自民、公明、立憲民主の3党が議席を得た。自民は県連組織を二分した4月の知事選のしこりを抱え、立民は旧民進党からたもとを分かった国民民主党と支持層を食い合う選挙戦となった。担当記者たちが舞台裏を振り返った。

■得票に透ける党内事情

 -自民現職松山政司氏のトップ当選だった。

 A 知事選では自民の有力支援団体である県農政連や県医師連盟が県連と対立したが、参院選までに関係修復は終わり、連携できていた。県農政連関係者は「知事選は終わったこと」と話していたね。

 B 国会議員は一枚岩ではなかった。県連執行部と距離を置く武田良太衆院議員はあからさまに自民推薦の公明新人、下野六太氏にてこ入れした。武田氏の地元選挙区の田川市や大任町を含め9市町村で、下野氏が松山氏を上回った。一定の票が流れたようだ。

 C 自民は衆院全11小選挙区での勝利を目指したが、7区では立民現職の野田国義氏に負けた。自民県連関係者は「7区は(八女市長だった)野田氏の地元。低投票率で、自民に近い浮動票も逃した」との見方だ。

 -下野氏が2位当選。

 D 約40万1千票で目標の50万票には遠かったけど、公明関係者は「前回並みの投票率に換算すると、目標値に届いていた」と指摘。何より立民に勝ったことを評価していたね。

 C 意外に楽観的だ。公明票は支持組織・創価学会の固い組織票が中心。投票率の影響は他党よりも小さそうだ。比例代表も前回から8万票以上減らしていて、課題はありそうだ。

 -約36万6千票の野田氏は旧民進系の国民新人、春田久美子氏に大差をつけたが3番手だ。

 B 立民側は「与党の上位独占は避けたい」としていたが、春田氏との共倒れも懸念される中、序盤から優勢が伝えられ「緩みが生じた」との声もある。

 D 別の関係者は投票率50%弱を念頭に「40万票に届けば、衆院選に向けた国民側との候補者調整が有利になる」と期待していたから悪くない数字かな。主導権争いが始まりそう。

 A 春田氏は約14万4千票で、共産新人の河野祥子氏にも負けた。支援労組が大票田と見込んだ北九州市でも及ばなかった。選挙前、国民側は「15万票からのスタート」と見ていただけに、県連関係者は相当衝撃を受けていたよ。

■自民分裂しこり消えず

 -自民陣営で懸念された知事選のしこりの実態は。

 A 松山氏がトップ当選を果たし、県連幹部は表向き「挙党態勢が築けた」と強調していたけど、執行部と距離を置く国会議員の動きに目を光らせていた。知事選、県連会長選に続く自民分裂劇の第3幕かも、という感じだった。

 B 特に知事選で県連に反旗を翻し、現職の小川洋氏支援の先頭に立った二階派の武田氏らは、あてつけのように下野氏の支援に力を入れていた。

 C 二階俊博幹事長が来援し、自民支持層の企業・団体を集めて北九州市で開かれた2千人規模の下野氏の応援集会は当初、福岡市開催が想定されていた。だけど、武田氏が対立する麻生太郎副総理兼財務相の影響力が強い北九州市での開催を提案したそうだ。公明関係者は「麻生氏へのけん制」という見方をしていたよ。

 A 松山氏の選対本部長を務めた原口剣生県連会長は「選挙期間中、1人だけ(応援に)一切来なかった」と武田氏への不満をあらわにした。公示前に武田氏は一度、松山氏の集会に顔を出していたけどね。

 B 県連内には党本部の方針に不満も。安倍晋三首相や二階幹事長が福岡入りして自公両陣営を激励したけど、県連幹部は「こっちはついで。党本部は公明の顔色ばかりうかがっている」とこぼしていた。

 D 公示前、公明側と自身の後援会との合同集会を開いた自民衆院議員は少なくなかった。衆院選で公明推薦をもらい、強固な結束力を誇る創価学会の票をあてにしている議員は多いからね。

 A 2016年の福岡6区補選で県連と対立して以降、県連に所属できていない二階派の鳩山二郎衆院議員は今回、松山氏の集会に参加して「一丸となって戦う」とアピールした。

 C 下野氏の応援もしっかりしていたよ。松山氏から事務所開きの案内がなかったことを理由に「思い切って公明を応援できる」と周囲に語っていた。公明側と後援会との合同集会では「下野氏のトップ当選を」との声が関係者から上がっていた。

 B 投票率が下がったとはいえ、松山氏の得票は約58万3千票と目標の70万票を下回った。まん延した「楽勝ムード」に加え、自民分裂のしこりの影響がなかったとは言えないな。

■立民と国民の溝深まる

 -国民が春田氏を擁立した引き金は、国民の榛葉賀津也(しんばかづや)参院幹事長がいる静岡選挙区に立民が候補を立てたことだった。

 A いわゆる「意趣返し」だね。県連の意思と反した公示1カ月前の決定に、党中枢にも「勝てる訳がない」「参院が党をかき回している」との声はあった。だが、自民にパイプがあり、国会運営で頼りになる榛葉氏への党本部の配慮だったとの見方が強い。

 B 擁立後も国民側はまとまらなかった。ある地方議員は「処分覚悟」で野田氏の集会に顔を出した。国会議員は後援会会合で、何人もの支援者から「なぜ立民と協力できないのか」と苦言を呈された。

 C 春田氏の劣勢が伝わる中、「春田氏の人となりを前面に出すべきだ」「国民の公約を訴えるべきだ」と遊説路線を巡り、選対幹部が激しく対立し合うこともあった。

 D 立民と国民の不協和音も垣間見えた。野田氏は、国民について「与党でも野党でもない『ゆ党』」と記者団に対抗心をあらわにしたこともある。

 B 両党を推薦する連合福岡幹部はこの発言を知ると、野田氏を直接なだめた。「民進系で2議席を取る」という目標を掲げる連合は、両党の対立は避けたかったようだ。

 C 連合幹部の仲介で立民と国民の両県連幹事長が協議し、公示日には両陣営でポスター掲示を協力した。衆院選をにらみ、両党を修復させる意味合いもあったそうだ。

 D ただ、両党の関係改善は難しそう。国民本部に不満を募らせ、立民入党をほのめかす地方議員は複数いる。国民県連幹部も「離党ドミノが起きれば、立民への反発で溝が深まり、連携は難しくなる」と頭を抱える。

 A 立民には「衆院選では国民現職に対抗馬を立てるべきだ」という人もいる。「将来にわたる火種」(国民県連関係者)をつくった党本部はどう責任を取るのだろう。

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