過半数の棄権 議会制民主主義が危うい

西日本新聞 オピニオン面

 さまざまな要因や事情が考えられるが、総じて言えば有権者の根強い政治不信の表れであろう。「過半数の棄権」とは、議会制民主主義の危機と言っても過言ではない。国会をはじめ、政党や政治家は事態を深刻に受け止めるべきだ。

 総務省の集計によると、第25回参院選の投票率(選挙区)は前回(2016年)より5・90ポイント低い48・80%と、50%を割り込んだ。これは過去最低だった1995年の44・52%に次ぐ史上2番目に低い投票率である。

 高知を除く全国46都道府県で前回を下回った。九州7県で50%を超えたのは50・54%の大分だけで、福岡、佐賀、長崎、鹿児島の4県では前回より10ポイント以上低下した。台風接近に伴う大雨で被災し、投票に行けなかった有権者もいたとみられる。

 選挙制度変更の影響も見逃せない。前回参院選から選挙区が合区された鳥取・島根、徳島・高知の4県のうち高知を除く3県は過去最低の投票率だった。この中で徳島の38・59%は全国最低である。「1票の格差」を是正するための措置とはいえ、隣接県を合体して一つの選挙区にする手法のいびつさが改めて浮かび上がった。

 さらに今回は参院定数6増(改選数は3増)で初めて実施され、合区で立候補できない議員を救済するため比例代表で優先的に当選する「特定枠」が設けられた。合区に定数増、特定枠と政党側の都合で選挙制度が複雑化した弊害も指摘したい。

 無論、低投票率を招いた最大の理由は選挙戦が全体として低調だったからだ。

 大分が九州7県で唯一、野党統一候補が激戦の末に自民党現職を破った選挙区だったように、5割を超えたのは岩手、宮城、秋田、山形など東北地方の1人区(改選定数1)をはじめ、いわゆる激戦区が目立つ。選挙戦が盛り上がれば、有権者の関心も高まり、投票行動に結び付くのは当然である。

 今回は安倍晋三首相(自民党総裁)が「憲法改正の論議をする政党か、論議すら拒否する政党か」を選ぶ選挙と位置付け、悲願の憲法改正に向けた論議を争点化しようとした。これに対し、野党各党は金融庁の審議会報告書に端を発する「老後資金2千万円問題」を突破口に年金問題や最低賃金など家計重視の政策を訴えたが、与野党の論戦は必ずしもかみ合わなかった。

 政権選択の意義付けがはっきりした衆院選と違い、政権の中間評価とされる参院選の争点をどう設定し、いかに分かりやすく伝えるか。主権者として「1票」の重みを改めて自覚するとともに、政党や候補者にはさらなる工夫と努力を求めたい。

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