患者同士が支える「中皮腫サロン」 交流会、福岡市でスタート テレビ会議で、全国の仲間と情報交換

西日本新聞 くらし面

 アスベスト(石綿)を吸い込んで悪性腫瘍「中皮腫」を発症した患者や家族がインターネットを通じ、全国で同じ病気に苦しむ人と交流する会「中皮腫サロン」が7月、福岡市で始まった。中皮腫は根治が難しく余命も短いといわれてきたこともあり、患者の心身の負担は大きい。サロンでは悩みを語り合うほか、手術や治療で体調を維持している人と情報交換し、前向きに生きる手助けをしていく。

 患者同士が助け合う「ピアサポート」の場を日常的につくろうと、石綿被害を受けた人を支援する「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会福岡支部」(同市)が始めた。中皮腫は原因のほとんどが石綿の吸引で、患者数も少ない希少がんとされる。当事者同士が接することは少ないため、テレビ会議システムを使い、全国に散らばる同じ立場の人をつなぐことにした。

 17日、同支部事務所であったサロンには患者2人が訪れ、関東や関西など8カ所と中継して語り合った。訪れた患者の一人は、5年前に中皮腫と診断された福岡県篠栗町の平岡睦啓(むつひろ)さん(65)。画面に女性の患者が映り「中皮腫になって15年です」と語ったのに驚いた。中皮腫は発症後の平均余命が2年と聞いており、自身も同じ年数を宣告されただけに、聞き入った。

 平岡さんは診断時、自暴自棄になって「もう治療しなくていい」と思っていた。それが娘の仲介により、全国で講演会や交流会を開く患者団体「中皮腫サポートキャラバン隊」(本部・大阪市)と接したことで考えを改めた。できる限りの治療をし、同じ立場の人に参考にしてほしいと思うようになった。

 この日も、画面に何度も問い掛けた。「今年、初めて痛みが出た。どうしていますか?」「手術か、抗がん剤治療か、最後はやはり自分で決断しましたか?」。そのたび、画面の向こうから経験談が返ってきた。

 「みんな自分のためだけでなく、他の患者や、これから発症する人のために頑張っていると感じた」。今後も参加すると決めた。

 中継先からは患者がそれぞれ、病気の経過や治療の状況を説明した。20代で中皮腫を発症した女性、中皮腫と診断された後に出産し、現在も妊娠中の女性。夫が中皮腫という妻は、手術するかどうか医師の間で意見が分かれていると悩みを寄せた。使用している抗がん剤の種類や量、副作用の症状、職場復帰を果たした人の体調にも話は及んだ。

 訪れたもう一人の患者、今村亨(こう)さん(54)=福岡市=は、治療を長く続けている人の話が参考になるという。2年前に中皮腫と診断され、失意に打ちのめされた。それが、キャラバン隊で治療を十数年続ける患者と出会い、「2年以上、生きている人がいるんだ」と希望が湧いた。抗がん剤治療は今も続くが、キャラバン隊の副代表にも就いた。

 「こういう場があれば、他の人がどんな治療をしているかや、最新の治療の情報が入る。情報が入りにくく、孤立しがちな年配の患者さんにも声を掛けていきたい」と語る。

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 サロンは毎月第2、第3水曜日の午後1時~3時半、福岡支部事務所(福岡市博多区博多駅前1の18の16博多駅前1丁目ビル202号)で開く。無料。8月は21日のみ。同支部=092(409)1963。

 ●大阪のキャラバン隊、各地を巡って支援

 中皮腫患者でつくる「中皮腫サポートキャラバン隊」(本部・大阪市)は2017年に活動を始め、国内外約30カ所を訪れて患者本人の講演会などを開いてきた。中皮腫など石綿関連の疾患に苦しむ人との交流は延べ100人を超え、今も患者の掘り起こしを続ける。

 訪問先では患者による講演会や交流会を開くほか、病院で同じ病気の人を紹介してもらい、支援につなげている。インターネットのサイトには希望を持てる闘病記を載せ、患者のインタビューをまとめた本も出版した。

 共同代表の右田孝雄さん(54)=大阪府=は16年に中皮腫で余命2年と診断された際、ネットなどを見ても回復の見通しが厳しい情報しかなく「何を頼っていいか分からず、どん底の心境」だったという。ブログで同じ患者とやりとりするうち、「中皮腫でも長く生きている人を探して話を聞き、闘病記を作って全国の患者を励まそう」とキャラバン隊を結成した。

 右田さんは「訪問先で講演する患者も10人ほどに増えた。励まして元気づけるだけでなく、治療のアドバイスもできるよう活動を広げたい」と話している。

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