【TOKYO2020 地方からの挑戦】(2)インバウンド 自治体間で協調と競争

西日本新聞 社会面

 2人の米国人記者が3日間の訪問で福岡のとりこになった。太宰府天満宮(福岡県太宰府市)の「飛梅」伝説に感動し、中洲の屋台で舌鼓…。「来る前はどんな街かイメージも湧かなかったけど、短時間で歴史と食文化を楽しめた。(空港が近く)東京からアクセスしやすいのも魅力だ」。旅行サイトのライター、イアン・リビングストンさん(31)は絶賛した。

 7月4~6日に2人を呼んだのは東京都と福岡県。狙いは「欧米豪」からのインバウンド(訪日外国人客)の増加だ。6月に政府が閣議決定した2019年版の観光白書によると、昨年1年間で福岡県に宿泊した外国人の国・地域別比率は韓国と中国や台湾、香港を合わせて85%。一方で米国は2%しかなく、欧州各国はさらに少ない。

 そんな九州にとって来年の東京五輪は、今秋のラグビー・ワールドカップとともに大きなチャンス。観戦のために東京に来る観光客を呼び込もうと東京都と九州各県が2年前から連携し、当該国の記者を招待して魅力を発信してもらう事業を始めた。「五輪を見に来た人は東京や京都の観光は混むと思って避けるはず。そこまで混まない福岡は魅力的。認知度を上げればチャンスはある」。イアンさんと同行したジャパンタイムズのノーアム・カッツさん(38)は太鼓判を押す。

 全国578の市町村長が参加する「2020年東京オリンピック・パラリンピックを活用した地域活性化推進首長連合」もインバウンドの増加を見越し、都心や羽田空港で各自治体のPRをしている。英国が12年ロンドン五輪までの4年間に全国各地で音楽や映画、食などのイベントを開き、延べ4300万人が参加して地域を活性化させた成功例にならった。

 今年からは企業から決済端末を無償で借り、旅行客の利便性向上のためにキャッシュレスを推進する事業を始める。そのモデル地区10市町村に九州から唯一、福岡県大川市が選ばれた。市内での木工体験や会員制交流サイトで話題になっている「猫家具」の販売などで活用する考えだ。

 同市観光協会の古賀亮史事務局長は「京都など有名な観光都市と違う魅力を発信できれば」と意気込む。「欧米から半日以上かけて来る人にとって佐賀空港を利用すれば東京から2時間の大川は遠くない。僕らでは掘り起こせない方も来てくれるきっかけになる」。五輪を契機に地方都市がインバウンドを呼び込むためには協調と競争、両方の意識が大切になる。

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 2020年東京オリンピック・パラリンピックを活用した地域活性化推進首長連合 新潟県三条市の国定勇人市長の呼びかけで15年に発足。当初は91市町村の首長で構成していたが、現在は578市町村長にまで増えた。国定市長が会長で、10人いる副会長の中には佐賀県武雄市の小松政市長や大分県別府市の長野恭紘市長が名を連ねる。具体的な事業に、都心で参加自治体の郷土料理が食べられ、ものづくりもできる「旅するマーケット」などがある。

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