五輪まで1年 理念と未来見据え準備を

西日本新聞 オピニオン面

 真夏の祭典となる東京五輪の開会式(2020年7月24日)まで1年を切った。首都圏では各競技のテストイベント(予行演習)や、それを通じた暑さ対策の検証、交通混雑抑止に向けた試行実験などが始まった。

 五輪のために世界中から集う選手、大会スタッフ、観客らは延べ800万人以上に及ぶと想定されている。とりわけ主役のアスリートたちが最高のコンディションで競技に臨めるよう、準備に万全を期してほしい。

 加えて東京都や国、大会関係者に求めたいことがある。五輪を通じて日本は国内外に何を発信するのか、また未来への遺産として五輪をどう生かすのか。大きな視野で祭典の意義を捉え国民の理解を深める姿勢だ。

 まず想起したいのは「復興五輪」の理念だ。東日本大震災で海外から寄せられた支援に感謝し、復興の姿をアピールする。この真摯(しんし)な取り組みへの国民の関心は薄らいでいないか。

 福島第1原発周辺では今なお帰還困難区域が広がり、避難生活者は約5万人に上る。原発の廃炉や汚染水、汚染土壌の最終処分のめども立っていない。復興は道半ばだ。五輪の準備と並行して被災地の再生を加速させてこそ理念は生きる。

 一方、大会の際に憂慮されるのは猛暑や交通渋滞などによる混乱だ。暑さ対策では競技の早朝実施、道路の遮熱性舗装、空調装置や緑陰の拡充など、交通対策では時差出勤や、ITを活用して自宅などで働くテレワークの奨励、幹線道への流入規制などが打ち出されている。

 肝心なのは、これらを五輪期間中に限らず恒常的な施策として定着させることだ。猛暑は都市のヒートアイランド現象が一因とされる。首都圏の混雑は慢性的で、解決には「働き方改革」も鍵を握る。これを機に都市づくりやライフスタイルの在り方を考え、変革の流れを生み出す。そうした意識を広げたい。

 パラリンピックと併せた大会の基本コンセプトは「(五輪遺産の)未来への継承」に加え、「全員が自己ベスト」「多様性と調和」を掲げる。国民全体が「おもてなし」役を務め、「共生社会」の理念を広めるという趣旨だ。これらも一過性で終わらせてはなるまい。東京に限らず、九州も含め、観光立国を目指し、外国人労働者の受け入れ拡大も進む日本である。不断に取り組むべきテーマだ。

 無論、メダル争いや経済波及効果への期待も大きい。しかし目先の興味や利害にとらわれれば五輪の意義は半減しよう。

 「スポーツには世界と未来を変える力がある」-。この大会ビジョンをしっかりと見据え、着実に準備の歩を進めたい。

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