学芸員語りまーす 「富野由悠季の世界」展(1) ガンダム愛 巨匠動かす 綿密な自筆メモ「発見」

西日本新聞 もっと九州面

福岡市美術館の学芸係長・山口洋三さん

 「機動戦士ガンダム」(1979年)など多くのアニメーションで総監督を務めた巨匠、富野由悠季(よしゆき)氏(77)の初となる展覧会「富野由悠季の世界」が福岡市で開かれている。富野氏本人は当初、展覧会の開催には消極的だったという。実現にこぎつけたのは、富野ファンや「ガンダム愛」を自任する地方の学芸員たちの熱意だった。

 福岡市美術館で学芸係長を務める山口洋三さん(49)は3年前、学芸員仲間である青森県立美術館の工藤健志(たけし)さん(52)から富野展の構想の相談を受けた。富野氏がそれまで個展を開いた実績はなかった。「無理だろうか」と思いつつ、2人で富野氏を訪ねた。

 案の定、富野氏は「演出という仕事は観念的な作業。展示するものがない」と一蹴。だが、1度断られたぐらいで諦めるつもりは全くなかったという。

 山口さんは少年時代を長崎市で過ごした。当時は地方民放局が少なく、「機動戦士ガンダム」のテレビ放映は半年遅れだった。初めてガンダムの全編を見たのは第42話から。「今までのアニメとはどこか違う。続きが楽しみ」と期待していたところ、次週は最終回との画面表示に面食らった。

 「機動戦士ガンダム」は放映当初は視聴率が低迷。52話の予定が43話で打ち切りになったことは知る由もなかった。ところが「ガンプラ」と呼ばれたプラモデルの発売、劇場版制作などでガンダムブームに一気に火が付く。友人から誕生日祝いに贈られた100分の1ガンプラと12色塗料セットで、山口さんもガンダムにのめり込んだ。

 福岡市美術館では現代美術を担当する。ガンダムファンである以上に「アニメは文化の一角を占めるほどに成長した」と肌で感じている。機会があるたびに富野氏を説得し続けたという。最初は「ない」と言い張った資料も粘り腰のかいもあって10箱ほど見せてくれた。「これなら展覧会ができる」と確信したという。

 山口さんの「イチ押し展示」は、テレビ版「機動戦士ガンダム」の自筆企画・設定メモ。宇宙移民の規模、政治状況、地球連邦軍の組織などが細かな文字でびっしり書き込まれている。山口さんは「画面に映らない時代背景まで突き詰めて考えている。アニメも手間暇掛けて作っていることを知ってほしい」。展覧会の狙いについて目を輝かせて語った。

    ◇  ◇

 本展は福岡市を皮切りに、兵庫、島根、青森、富山、静岡の6カ所の地方都市で開かれる巡回展(開催予定の会場も含む)。開催に向けて、山口さんら巡回する6美術館の学芸員7人が尽力した。7人が「イチ押し」する展示作品を紹介する。

◆展覧会「富野由悠季の世界」 9月1日まで、福岡市中央区大濠公園の市美術館。ポスター、セル画、イラスト原画など約3000点を展示。名場面集も上映する。西日本新聞社など主催。一般1400円、高大生700円、小中生500円。市美術館=092(714)6051。

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