学童保育、質低下の懸念 法改正「職員1人でも可」 来春施行へ

西日本新聞 一面

 共働きやひとり親家庭の小学生を学校などで預かる放課後児童クラブ(学童保育)の職員配置基準の緩和を盛り込んだ改正児童福祉法が来春施行される。1カ所につき職員2人以上の全国一律の現行基準を見直し、市町村の裁量で1人でも可能とする内容。ただ職員からは「児童の安全や保育の質が確保できない」と懸念の声が少なくない。専門家は「基準見直しで学童保育の質に自治体間格差が生まれかねない」と指摘している。

 「お帰り。きょうはプールに入った?」。6月、福岡県直方市の学童保育所。職員6人が、下校後の1年生を迎え、参加人数の確認や手洗いの指導に当たった。同所は1~6年生の約90人が利用。運動場で遊ぶ子や部屋で過ごす子の見守りなど、職員は夕方まで慌ただしく動き回る。出席予定の児童が姿を見せず自宅まで行くこともある。

 「これ以上職員を減らされると(運営が)回らない。国は現場の実態を知ってほしい」。学童保育を担当して11年目の女性職員(64)は基準緩和に疑問を抱く。

 厚生労働省によると、学童保育所は昨年5月時点で全国に約2万5千カ所、約123万人が利用し、いずれも増加傾向。発達障害など専門的な対応が求められる場合もあり、「親のニーズも多様化している」と、ある職員は打ち明ける。

 そうした中、国は法改正により、現行制度の「職員2人以上配置」という義務規定を、努力目標の「参酌基準」に緩和した。地方の人材不足を理由に、全国知事会などはハードルを下げるよう国に求めていた。

 だが、市町村は職員削減には慎重だ。直方市こども育成課は「保育の質の確保や子どもの安全、安心を考えると、2人態勢は守る必要がある」と現状維持する考え。福岡県遠賀町も「新しい職員を探しても見つからないが、1人は少ない」とする。山間部を抱える大分県中津市の担当課は「過疎地はそもそも利用児童が少なく、安全が担保されれば1人もあり得る」と一定の理解も示すが、すぐに見直す動きはないという。

 福岡県内の保護者は「職員を減らし、児童の安全が確保できなければ親は仕事を諦めざるを得なくなることを、行政は理解してほしい」と切実に訴える。

 全国学童保育連絡協議会(東京)の千葉智生事務局次長は同県であった職員向け講座で、「緊急時や安全確保を職員1人で判断しなければならず、複数の職員による多様な保育もできなくなる。地方の自主性に任せた結果、学童保育への認識の違いや厳しい財政状況などから自治体間で保育の質に格差が出る恐れもあり、国は(人材確保のための)必要な財源措置を講じるべきだ」と強調した。

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人材確保へ待遇改善を

 北九州市立大の楠凡之(ひろゆき)教授(臨床教育学)の話 学童保育は、発達障害や虐待体験など複雑な背景のある子どもも少なからず在籍しており、職員の業務内容はとても厳しい。高度な専門性がなくてはできない仕事であるにもかかわらず、待遇面などは悪く、人材不足に陥るのは当然だ。国や自治体は職員を減らすことで対応するのではなく、保育士と同等の労働条件を確保するなどして人材を確保し、保育の質を落とさないような解決策を講じてほしい。

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