ひずむ郵政(1)の2 かんぽ、局員がざんげ うそまみれの顧客勧誘「申し訳なかった」

西日本新聞 社会面

過去に自身が行った保険の不正販売について説明する関西の郵便局員(写真の一部を加工しています) 拡大

過去に自身が行った保険の不正販売について説明する関西の郵便局員(写真の一部を加工しています)

民営化後のかんぽ生命の契約件数

 「ざんげしたいことがあります」。保険営業を担当する関西の郵便局の男性局員が重い口を開いた。

 男性は数年前まで、本来は保険に加入できない持病のある人に「告知の必要はない」と虚偽の説明をし、契約を結んでいた。

 この方法で契約させた40代の女性は持病が悪化して入院。かんぽ生命は「告知義務違反」を理由に保険金の支払いを拒否した。女性は「局員に告知しなくていいと言われた」と抗議したが、男性は会社の調査に「そんな説明はしていない」とうそをつき通した。

 上司から求められた1日5件の見込み客宅への訪問。訪問先がないときは、目的外使用が禁じられているゆうちょ銀行のデータを見て、資産がある顧客に電話をかけ続けた。多いときで1日50件。「制度が変わった」「相続税対策の説明をしたい」というのは表向きの訪問理由で、目的はもちろん保険契約の獲得だった。

 「だまして申し訳なかった。契約を取らないと局に帰れなかった」

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 営業の現場では、勧誘のテクニックとして複数の“話法”が存在する。昨年、関東の局員はインストラクターと呼ばれる指導役に同行し、「生前贈与話法」を目の当たりにした。

 インストラクターは高齢女性に「天国までお金を持って行ったらお子さんが困りますよ」「毎年100万円をお子さんの通帳に動かして保険の形で預けてもらえれば、相続税も贈与税もかかりません」。女性と同席した娘にサインさせた。

 局員は「そもそも相続税の課税対象者でない場合や、相続税より保険料が高くなることもあるが、そういった説明は一切しなかった」と明かす。

 マイナンバー話法、介護施設話法、凍結話法‐。次々に生み出される新たな勧誘方法。保険内容を理解しないまま契約する高齢者は後を絶たない。

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 かんぽ生命のメイン商品である貯蓄型保険は長引く低金利政策によって魅力が薄れ、新規契約の獲得は困難になった。多くの局員は顧客が不利益となる「乗り換え」によって厳しい営業ノルマをしのいでいる。

 数年前に退職した九州の元局員は成績優秀者として表彰された経験があるが、ほとんどが乗り換えだった。「商品で勝負しても他社に負ける。お客さんに多少の不利益があっても乗り換えさせるしかなかった」

 報道によって発覚した9万件超の不正営業も、すべて乗り換えに関するものだった。旧保険の解約時期を意図的にずらすことで保険料を二重払いさせたり、無保険状態にさせたりする乗り換え隠しの「潜脱(せんだつ)」行為が横行。被保険者を変えることで新規契約を装い、満額の実績と手当金を稼ぐ手口も広まる。

 かんぽ生命の植平光彦社長は10日の記者会見で、不正営業を知ったのは「直近」と答えた。だが、実際は数年前から二重払いや無保険状態を問題視し、ひそかに件数を集計していた。

 「もはや会社に自浄能力はない」。現場の局員たちの間には無力感が漂う。

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 不正営業の発覚で窮地に立つ日本郵政グループ。民営化から12年。長年、地域に信頼されてきた郵便局で何が起こっているのか。巨大組織が抱える問題を探った。

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契約減、歯止めかからず

 郵政民営化された2007年10月時点のかんぽ生命の保有契約件数は5518万件だったが、年々減少。18年度末には2914万件とほぼ半減している。

 一方、新規の契約件数は民営化後、200万件前後で推移。中高年の契約者が多くを占めているが、保有件数の減少分を穴埋めできていない。

 主力商品は貯蓄型の養老保険。長引く低金利で苦戦を強いられるが、民業圧迫を避けるとの理由で新商品開発には他社以上に厳しい規制が課されている。このため、大手生保と比べて競争力が低いとされる。

 近年は競争力を補うため他社との提携を進め、日本生命や住友生命の商品を郵便局で販売。日本郵政は、がん保険の販売委託を受けるアフラック生命の米国親会社にも出資し、今後はグループ会社化して新商品の共同開発などに取り組む。

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