祭りが、仲間が闘病の光 戸畑祇園・東大山笠総監督 森さん 「恩返しに駆ける」

西日本新聞 夕刊

 九州各地で夏祭りが本番を迎える中、提灯(ちょうちん)山笠で知られる北九州市戸畑区の「戸畑祇園大山笠」で、白血病と向き合いながら男衆を率いる人がいる。今年の当番山を務める「東大山笠」総監督の会社員森貴志さん(42)=同区。家族や山笠の仲間に支えられ、半年間の抗がん剤治療に耐え抜いた。26~28日の祭り本番では、感謝の思いを胸に戸畑の街を駆けるつもりだ。

 祭りの安全を願い、担ぎ棒を清める神事「棒洗い」があった15日。森さんは威勢のよい声で指示を出していた。物心ついたときから、後に総代表となる父に連れられて東大山笠に参加した。憧れてきた総監督には先月就任したばかり。闘病のため本調子だった頃から約12キロ痩せたが、「今年出なかったら悔やむ」と自らを奮い立たせている。

 異変に気付いたのは昨年10月。公園で長男(10)とキャッチボールしていたとき、わずか10球で息が切れた。検査で急性骨髄性白血病と分かり、11月初旬、市内の病院で抗がん剤治療が始まった。

 当時の役職は副総監督。責任は重く、入院当初は祭りに復帰できるか気掛かりだった。副作用で髪が抜け、終わりのないだるさに襲われた。次第に、何も考えられないようになった。無菌室だったため、家族とも面会できなかった。

 一時退院した12月、山笠の仲間から千羽鶴2束を贈られた。平日の夜に集まり、折ったという。祭りの季節には毎日顔を合わせる人たち。家族のような結び付きの強さを感じた。

 治療は今年5月の連休明けまで続いた。2月に白血病を公表した競泳の池江璃花子選手と入院時期が重なった。ツイッターを通じて池江選手が発信する言葉に共感し、力をもらったという。多くの励ましを力に退院が決まると、総代表から総監督就任を打診された。運行責任者として山笠を先導する重責。治療は続いており家族は心配したが、ありがたく引き受けた。

 当番山は4年に1度回ってくる。東大山笠は今年、山の台座を飾る「祭礼幕」を半世紀ぶりに新調し、祭りに臨む。「支えてくれた方々に恩返しをするため、みんなが喜ぶ祭典にしたい」。にこやかな表情に力を込めた。

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