かやぶきの里に癒やしの宿 うきは市の注連原集落 築150年の農家再建

西日本新聞 筑後版

 長い梅雨もようやく明けて夏本番。うきは市の山間部は、平地の暑さを忘れる人気スポットだ。一押しは筑後川支流の隈上川沿い、昔ながらの山里の風景が残る同市浮羽町の新川・田篭地区。その最上流部にこのほど、かやぶきの一軒家が宿泊施設としてオープンした。訪ねると、清流のせせらぎとレトロな調度品に心癒やされるぜいたくな空間が広がっていた。

 旧浮羽町中心部から合所ダムを通り過ぎ、新川・田篭地区に入ると、懐かしい景色が広がる。一帯は国重要文化財「平川家住宅」に代表される、かやぶきの農家住宅が点在する国重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)。川沿いに約6キロ続く伝建地区の最奥に、目指す注連原(しめばる)集落がある。標高315メートル。肌に触れる空気も心なしか涼やかだ。

 「もうこの先は大分県(日田市前津江町)ですよ」

 集落内でスペイン料理などを提供するレストラン「イビサスモークレストラン」を営む尾花光さん(38)が出迎えてくれた。尾花さんは地元住民ら7人でつくる「注連原村つくり会」の代表も務める。

 目の前に立つのが約150年前に建てられた民家を再築した「注連原住宅」だった。平屋寄せ棟造り(約150平方メートル)の建物で、中には馬小屋を備えた「にわ」と呼ばれる土間や「ごぜん」の間などがあり、伝建地区選定の際、かやぶき家屋として高い評価を受けたという。

 ただ、すぐ脇を隈上川が流れており、2012年7月の九州北部豪雨では建物の大半が崩れる被害を受けた。その後、所有者が市に住宅を寄贈。市は「宿泊施設としてよみがえらせ、地域復興のシンボルに」との方針を決めた。梁(はり)や柱は再利用して組み立て直すなど約3年かけて再建し、村つくり会が指定管理者となって再出発への準備を進めてきた。

 尾花さんに誘われて中に入った。工事完了時はがらんどうだった屋内には、アンティーク調の机や座布団が置かれ、宿泊施設としての設備は万全。かつて布団地として使われていた久留米絣(かすり)がタペストリーとして壁に掛かり、寝室には京都の表具職人によるアート作品が飾られていた。

 内装をそろえた尾花さんによると、資金を抑えるため調度品の購入にはインターネットオークションを活用した。「雰囲気に合う家具があれば、送料を抑えようと長崎県などまでトラックを走らせた」と振り返る。

 障子と雨戸を開放して、畳の間から外を眺めた。隈上川と、その奥ののどかな農村風景が目に飛び込んできた。せせらぎに虫の音、小鳥のさえずりが重なり、気持ちが満たされた。

 外国人観光客に人気を集めそうな条件がそろい、そうした点も意識してか、市は当初高めの客単価を検討していたが、最終的な宿泊費は一棟貸し切り(最大7人)で1人税抜き7千円、3人目からは同3500円、小中高生同3500円。

 「注連原のファンを一人でも増やしたいからこその値段設定。気軽に何度も遊びに来てもらいたい」と尾花さんは強調する。

 宿泊の楽しみである食事は、備え付けの食器による自炊が基本。周辺で取れた野菜や卵、尾花さんの店で売る自家製ベーコン、天然酵母パンなどを食材として提供する。食材費として朝食同千円、夕食同3500円が必要となる。

 大切に守り継がれる建物や風土には深い味わいがあり、それを支える人たちの思いは心に響くのだと改めて感じた。

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