外国人患者に遅れる対応 救急搬送10年で4割増 福岡市

西日本新聞 社会面

 福岡市で救急搬送された外国人の数が、昨年は644人に上り、この10年間で4割近く増えたことがわかった。同市に在住、観光に訪れた外国人数は大幅に増加しており、それに伴う事故やトラブルが増えたことが背景にあるとみられる。4月の改正入管難民法施行で、外国人労働者はさらに拡大する見込み。9月にはラグビーワールドカップ、来夏には東京五輪と国際イベントも控え、外国人患者の受け入れ態勢整備が急務になっている。

 福岡市消防局によると、2009年に477人だった外国人の救急搬送は、15年に600人を超え、17年には697人に上った。18年は微減したものの、救急搬送全体(7万775人)の約1%だった。

 同市内に住む外国人数は18年で約3万7千人。10年間で6割増えた。福岡空港と博多港から入国した外国人数は、09年の約46万6千人から18年の約309万4千人と7倍近くに。それに合わせて救急搬送数も増えていることがうかがえる。

 九州の他都市で昨年の外国人の救急搬送が多かったのは、北九州市の128人、長崎市の116人、宮崎市の32人など。いずれも近年増えているという。

 外国人の増加に伴い、課題となっているのは医療現場の多言語対応の問題だ。

 福岡市に住むオーストラリア人男性(30)は「病院の対応に今も不信感が拭えない」と肩を落とす。今年1月、自転車で走行中に転倒。鎖骨を折るけがで、英語対応ができると救急隊員が確認した病院に搬送された。十数針縫う手術を受けたが、通訳が不在で術前の十分な説明を受けられず、術後の説明も乏しかった。「英語で対応できると言っていたのに」。男性は不安感から当初1週間の入院を早めに切り上げ、数日で退院した。

 福岡市消防局は16年に3者通話による通訳サービスを導入。搬送時などで10カ国語に対応している。ただ、受け入れる側である市内38カ所の救急指定病院のうち、英語対応可能な施設は3分の1程度。どの病院がどの言語に対応しているかのリストなどはなく、隊員は搬送前に病院に外国人患者の受け入れが可能かを電話で確認している。市消防局は「受け入れ拒否やたらい回しにあったことはないが、外国人の搬送が増えれば外国語対応が可能な医療機関のリスト化なども検討しなくてはならない」と話す。

 市と福岡県は県内の患者や病院を対象に、電話による17カ国語の通訳や医療通訳の派遣を無料で行っている。タイ語の医療通訳をする同市の和田ワサナさん(52)は「そうしたサービスの存在を知らず、どこに助けを求めればよいかわからないでいる外国人は多い。支援の周知や拡充が必要だ」と訴える。

 外国人患者を巡っては、多言語対応以外にも医療費の未払い問題などが深刻化。政府、自治体には早急な対応が求められている。

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