真っすぐな視線の先に 岩田 直仁

西日本新聞 オピニオン面

 まずは、写真をご覧いただきたい。宮崎県西米良村の保育園で働く22歳。初々しい笑顔に涼風を感じませんか?

 地元のカメラマン、小河孝浩さんから写真集「上を向いて行こう 西米良発平成若者図鑑」が届いた。さまざまな職場で働く若者が、レンズを見上げた瞬間をパチリ。モノクロ写真に、平成生まれの男女40人が納まっている。

 会心の笑顔、柔らかいほほえみ、目力が印象的な真剣な表情…。ページを繰りながらにんまりしたり、背筋を伸ばしたり。そんな写真集だ。

 村の人口は約千人。宮崎県では最も人口が少ない自治体だが、「最も有権者意識が高い村」でもある。

 前回参院選(2016年)時の投票率91・13%は、全国の市町村で最高だった。5割を切って戦後2番目の低投票率だった今回は87・07%。全国1位は譲ったが、トップクラスに変わりはない。

 投票日に、村は無線放送で村内8地区ごとの中間投票率を定期的に流し、投票所へと有権者の背中を押す。とはいえ、行政の工夫や努力だけで、投票率が上がるわけではない。村側は「投票するのは当然という風潮が、世代から世代にしっかり伝えられている」と説明する。

 写真集に登場した若者にメールや電話で尋ねると、そんな空気は確かにあるが、変化の兆しもあるようだ。

 村の人口は減り、高齢化も進む。役場に勤める男性は「この仕事でなければ、政治に対する関心はなかったかも」と漏らす。今の政治に「期待は全くない」という女性もいた。冒頭の保育士も同じような意見だったが、「社会を少しでも変えるには、投票は大切だと思う」と話す。国政への不信や不満、諦念などを抱えながらも、取材した若者はみな1票を投じていた。

 「限界集落」とささやかれる地区を抱える自治体は、九州にたくさんある。そして、どんな土地にも、懸命に生きる若者たちがいる。

 その真っすぐな視線を受け止める誠実さと気概を持った政治家が今、どれほどいるのか。上から目線の失言や暴言、少数者や弱者に対する配慮に欠けた放言が飛び交う中央政界を眺めれば、心もとない限りだろう。

 まずは、政治に携わる方々に見てもらいたい写真集かもしれない。 (論説委員)

PR

PR

注目のテーマ