英国の新首相 無秩序離脱の回避が責務

西日本新聞 オピニオン面

 欧州連合(EU)離脱問題に揺れる英国で、辞任したメイ首相に代わり、元外相のボリス・ジョンソン氏が新たな首相に就任した。ジョンソン氏は強硬離脱派の急先鋒(きゅうせんぽう)として知られる。

 ジョンソン氏は就任後、「10月31日に必ずEUを離脱する」と宣言した。ジョンソン新首相の誕生で、国際社会が懸念する英国の「合意なきEU離脱」の可能性が一段と高まった。

 英国では近年、東欧諸国のEU加盟によって移民労働者の流入が増えたことで、「移民に仕事を奪われている」とする反EU感情が高まり、2016年に実施された国民投票でEU離脱派が僅差で勝利した。

 その後3年余りたったが、離脱条件を巡る英国とEUの交渉は難航したままだ。このままでは「合意なき離脱」に陥る恐れが強まったことから、当初は今年3月だった離脱期日を延ばし、10月末に設定し直している。

 最も難航しているのは、アイルランドとの国境問題だ。メイ前首相とEUがまとめた合意案では、アイルランドとの間に厳しい国境管理を復活させない方策を見つけるまでの間、英国をEUの関税区域に残す「安全策」の条項があるが、強硬離脱派議員らは「永久にEUに従属することになる」と反発し、合意案を議会で否決した。

 ジョンソン氏は「EUと再交渉してもっと良い合意にする」と主張している。しかしEU側は再交渉を否定しており、合意案の作り直しは容易ではない。

 このまま離脱期限日を迎えれば、現在は一つの経済圏となっている英国と他のEU諸国との貿易が突然断ち切られ、食糧や医薬品の供給さえ滞る恐れがある。金融市場の混乱や企業、消費者の心理悪化も懸念され、世界経済全体の下押し圧力が強まるリスクがある。ジョンソン氏は国際社会に対し、無秩序な離脱を回避して世界経済への悪影響を防ぐ責務を負っている。

 強硬離脱派のジョンソン氏が首相に就任したからといって、英国民の総意が「合意なき離脱」を容認しているとは言い難い。議会は強硬離脱派、穏健離脱派、残留派が入り乱れている。民意を確認、集約するために、議会を解散して総選挙を実施したり、再度の国民投票を行ったりするのも一案ではないか。

 ジョンソン氏の大衆扇動的な政治手法も不安要因だ。ジョンソン氏は国民投票の際、事実の裏付けのないEU批判で国民をあおった。そんなことではEUとの信頼関係は失われ、国民の分断も深まる。ジョンソン氏は誠実な姿勢でEU、国民の信頼を得て、無秩序離脱の回避を最優先に据えた建設的な議論を進めなければならない。

PR

PR

注目のテーマ