心震えた逆転サヨナラ 高校野球福岡大会を振り返って

西日本新聞 ふくおか版

 8月6日に開幕する第101回全国高校野球選手権の県代表校が29日、筑陽学園に決まった。16年ぶり2回目の夏の甲子園で、8強入りした春のセンバツに続く出場に期待が高まる。計133チームが24日間にわたり、激闘を繰り広げた福岡大会。担当記者が振り返った。

 私の手元に、雨と泥が付着して変色した1冊のスコアブックがある。今月6日の開幕試合から記録し続けたページをめくると、取材した約30の試合の情景、球児たちの笑顔と涙がありありと立ち上がってくる。

 高校野球は何が起こるか分からない‐。よく聞くフレーズだ。負けたら最後の状況下では、プレーの技術以外の何ものかが勝負を左右したりする。分かったようなつもりでいたが、実際に目の前にすると心が震えた。特に、4度の逆転サヨナラ試合では。

 南部大会3回戦、福岡大大濠対福岡のゲームは最も印象深い。

 八回まで福岡の投手が試合を完全にコントロールしていた。隣で取材していた他紙の記者が、「相手打者が遊ばれているな」と漏らすほど。しかし九回裏、福岡大大濠が怒濤(どとう)の連打、サヨナラ勝ちのドラマが生まれた。

 福岡大大濠ナインの晴れやかな表情、福岡の投手が飲料が入ったハンディーパックを握りつぶし、地面にたたき付けて泣き崩れる姿。どちらも目に焼き付いて離れない。あの時、ハッとした。「今、彼らの人生の最も大事な瞬間に立ち会っているのかもしれない」。ざわっと鳥肌が立った。

 私が記事で伝えられたことは、ほんの一握りに過ぎない。ついもらい泣きをしてしまいそうな場面は、勝ち負けに関係なくあまたあった。文章に残らない記憶も、このぼろぼろのスコアブックに大切に閉じ込めておきたい。宝物として。

 そして、頂点に立った筑陽学園には、去っていった132チームの夢も背負って甲子園で大暴れしてほしい。全国の強豪校が立ちはだかろうとも、挑戦者の気持ちで。そう、高校野球は何が起こるか分からないのだから。

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