【TOKYO2020 地方からの挑戦】(5)レガシー 五輪後も育成力入れて

西日本新聞 社会面

福岡県スポーツ推進審議会会長としてレガシーづくりについて提言する福岡大の片峯教授 拡大

福岡県スポーツ推進審議会会長としてレガシーづくりについて提言する福岡大の片峯教授

 1年後の東京五輪に向けて高まる熱気に水を差す話が舞い込んだ。2014年から九州各県が運動能力の高い小中学生を探し、育てている「九州タレント発掘・育成コンソーシアム事業」。将来のメダリスト育成を目的として国からの委託で取り組む施策だが、福岡大スポーツ科学部の片峯隆教授(61)は東京五輪後に国からの予算が大幅に減額される可能性があるという話を耳にした。

 「せっかく地方から世界へというルートができたのに。これからは国策ばかりに頼ってはいけない」。日本がボイコットした1980年モスクワ五輪で男子走り高跳びの幻の代表だった片峯教授は警鐘を鳴らす。

 64年の東京五輪後は全国に水泳や体操のクラブチームが誕生し、サッカーなどで実業団の「日本リーグ」が発足した。国民にスポーツが浸透した背景には65年からの「いざなぎ景気」による経済発展に支えられた面もあった。一方、今は10月から消費税が10%に引き上げられ、将来の年金受給水準の低下も見込まれるほど財政は厳しい。片峯教授は「景気が悪いとスポーツの進展は止まる。国に頼らず、企業や市民が自主的に支援する仕組みができないと未来はない」と主張。東京五輪を通じてスポーツへの理解を深めることが不可欠と主張する。

 片峯教授が会長を務める福岡県スポーツ推進審議会は昨年末、ポスト五輪も見据えて2014年に策定した「福岡県スポーツ推進計画」を見直した。23年以降は毎年、大規模スポーツ大会や強化合宿を誘致し、東京五輪に向けて「ホストタウン」に登録した県内の自治体が五輪後も対象国・地域と相互交流するよう促すなど、五輪の「レガシー(遺産)」づくりに力を注ぐ。施策を進めるため、新たな基金を創設する方針も掲げた。「青少年の育成に関しては、地元の企業は熱心。子どもにスポーツの面白さ、楽しさを伝えることが財産になる」と訴える。

 水泳界では1964年の東京五輪で銅メダル1個と惨敗した教訓から、全国で民間のスイミングクラブ創設が進んだ。こうしたスイミングクラブから育った初の金メダリストが鈴木大地スポーツ庁長官。東京五輪から24年が過ぎた88年ソウル五輪の男子100メートル背泳ぎを制した。「人を育てることだから、時間は多少なりともかかる」と鈴木長官は話す。2020年の東京も一過性のイベントにせず、さらに先の未来を見据えられるか。目先のメダル量産だけがレガシーではない。 =おわり

 ◆九州タレント発掘・育成コンソーシアム事業 文部科学省が日本スポーツ振興センター(JSC)に委託し、JSCが九州各県の競技スポーツを主管とする課などで組織する「九州タレント発掘・育成コンソーシアム」に再委託している事業。九州ブロックでジュニア世代のトップアスリートを選抜し、特に優れた素質を持つ選手を中央競技団体の育成システムにつなげることで、恒常的に将来有望な選手を地域から輩出できる流れを構築する。

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