国会バリアフリー 社会全体で進める契機に

 国会がバリアフリー化に向けて動き始めた。言うまでもなく先の参院選で重い身体障害のある2人が当選したからだ。

 必要に迫られてようやく-という思いも禁じ得ないが、「国権の最高機関」がその認識を新たにして超党派で障壁の除去に取り組む姿勢は歓迎したい。私たちも職場や地域など身近な現場に引き寄せ、バリアフリーの意義を考える契機としたい。

 全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」患者の船後靖彦氏と脳性まひの重度障害がある木村英子氏の2人は「れいわ新選組」の比例代表で初当選した。

 船後氏は声を発することができない。あごの筋肉を使って歯でかむセンサーでパソコンを操作し、介助者が示す文字盤を目線で追って意思を伝える。木村氏は手足を動かすのが難しく、2人とも大型の車いすと介助者が欠かせない。

 参院の議院運営委員会理事会は、国会のバリアフリー化を進めることで与野党が合意した。議運委員長は「議員活動が100パーセント円滑にできるように協力する」としている。ぜひ、そのようにしてもらいたい。

 議運委理事会では介助者が本会議場に立ち入り、採決の際は投票を代行することを認めた。意思疎通のためパソコンの持ち込みも必要に応じて許可する。体調に配慮してネクタイや上着の着用を求めないとした。

 さらに、大型の車いすが使えるように、本会議場の出入り口に近い最後方の3議席を改造してスペースを確保した。また、船後氏と木村氏は、日常利用する介護サービスが議員活動中は公費負担の対象外となるため、公的補助が受けられるよう要望していたが、これも参院などが当面負担すると決めた。

 もちろん、これらは8月1日召集の臨時国会に向けた当面の緊急措置である。解決すべき課題は少なくない。当事者の要望を可能な限り実現してほしい。船後氏は、目の動きで会話や動作を遠隔操作できる「分身ロボット」の活用も求めている。

 国会議員として重要なのは質問時間の確保である。重度の障害者がその意見を伝えるのに時間がかかるのは言うまでもない。各委員会での質問時間は通常、各会派の議員数に応じて割り振られるが、長く配分する配慮があってしかるべきだ。各会派の英断に期待したい。

 バリアフリーとは障害者や高齢者の日常生活で障壁となるものを取り除くことだ。階段や通路の段差のような物理的障壁にとどまらず、昨今は社会的・制度的・心理的障壁などを総称する。バリアフリーの取り組みを社会全体へ広げていきたい。

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