初の英語「話す」正答率30% 全国学力テスト 技能別の差鮮明

西日本新聞 社会面

 文部科学省は31日、小学6年と中学3年を対象にした2019度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。初めて実施した英語では「読む、聞く、書く」の正答率が56・5%に上る一方、「話す」は30・8%にとどまり、技能別の差が浮き彫りになった。英語と数学を含めた中学の3教科では、これまでと同様に「東高西低」の傾向が見られた。

 テストは4月18日に実施。中学で初めて英語を導入したほか、国語と算数・数学では、基礎知識を問うA問題と、知識の活用力をみるB問題を一体化した出題形式に変更した。当日受けた約202万人の結果を集計した。

 英語の「話す」は各校のパソコンを活用したが、機器が準備できないなどの理由で約5%の学校が実施を見送った。実施した学校のうち17・5%では音声データの欠損などで一部生徒の採点ができなかった。このため「話す」のみ正答率は「参考値」とし、都道府県別の数値は公表しなかった。

 文科省の担当者は英語について「『話す』に関しては明確に課題があり、もっと改善を目指さなければいけない」と評価。国語と算数・数学は「引き続き応用力に課題がある」とした。

 都道府県別(公立のみ)の平均正答率(小数点以下は四捨五入)を見ると、国語と算数・数学では上位県の常連である秋田、石川、福井が1位に。英語(「話す」を除く)は福井とともに東京、神奈川がトップとなった。全国平均(公立を四捨五入して比較)より好成績の県は西日本より東日本に多く、九州では中学で全国平均を上回ったのは大分の国語と数学のみ。小学の算数は7県とも全国平均に届かなかった。

 東高西低の傾向は政令市別でも際だった。東日本(11市)では、10市が中学の英国数のいずれかで全国平均を上回り、5市は全教科で平均を超えた。一方、西日本(9市)では、英国数いずれかで平均を上回ったのは3市にとどまり、全教科で超えたのは福岡市のみ。北九州市と熊本市は全教科で平均を下回った。

 文科省の担当者は「出題形式の変更のため前年との単純比較はできないが、上位と下位の差はそれほど大きくなく、底上げの傾向があるとみている」と説明した。

■固定化する課題校 有効策なく現場は苦悩

 31日、2019年度の結果が発表された全国学力テスト。近年の特徴として都道府県で大きな差は見られなくなった一方、課題のある学校の固定化が浮き彫りになっている。平均正答率が全国平均を下回る傾向にある九州の教育委員会の中には、広報紙を通じて学校別の結果を公表したり、校長を個別に呼び出して「指導」したりするケースも。学力向上の有効策を見いだせないまま、課題校の現場で苦悩が続いている。

 「子どもたちの未来のために学校・家庭・地域がチームになろう」。福岡県の町が昨夏、各戸に配布した広報紙には、そんな呼び掛けと学力テストの結果が2ページにわたり掲載された。全国、福岡県、町全体と学校ごとの平均正答率が一覧表記されていた。

 町平均はこれまで一度も全国平均を上回ったことがない。広報紙では学力に関連付けられる朝食の摂取率、家庭での予習、復習の実施率の低さなども示した。町教委の担当者は「町民に現状を把握してもらいたいと思った」と説明する。

 反発覚悟の苦肉の策だったが、苦情を含めて反応はわずかだった。県教委からは「改善策が示されていない」と公表の在り方について指摘も受けた。「学校だけの指導にも限界がある」。担当者は頭を抱える。

 福岡県のある公立小ではテスト実施を控えた今春、職員会議で校長が職員にハッパを掛けた。「今回は97ポイントを取ろう」。全国平均を100とした数値目標だ。50代の男性教師は「やはり点数競争になるのか…」とため息をついた。

 かつて勤務した学校では全国平均を下回った結果に、教育長が校長を呼び出して「どうなっとるんや」と注意。この出来事を境にテスト対策に否定的だった校長も、職員に指示して子どもたちに過去問を解かせるようになった。教師は「学ぶ喜びは度外視。現場ではおかしいと感じても異論は許されない」と嘆いた。

 日本と米国の公教育に詳しい教育研究者、鈴木大裕さんは「テストで測れる学力は非常に狭く偏っている上、毎年続けても学力が上がるわけでもない。年63億円もかけて悉皆(しっかい)調査をするより、予算を現場の指導改善に直接投資した方がいいのではないか」と指摘した。

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