「虐待受けとらん?」同僚の異変感じ…保護につないだ女性 「一歩踏み込んでよかった」

西日本新聞 社会面

「あの時、声を掛けて本当によかった」と振り返る女性 拡大

「あの時、声を掛けて本当によかった」と振り返る女性

 児童虐待の相談・通告件数が増加の一途をたどっている。その半面、札幌市で6月に2歳女児が衰弱死した事件のように児童相談所の要員不足などで貴重な情報が生かされないケースもある。そこで注目されるのが知人や近隣住民による支援。福岡県内のパート女性(51)は、父親から性的虐待を受けていた職場の女性への声掛けを通じて事態改善に導いた経験から、周囲が勇気を持って関わることの重要性を訴える。

 女性が勤める小売店で、二十歳の同僚が働き始めたのは3年前。「寂しいから隣にいてもいい?」。親しくなった頃から同僚にそう声を掛けられるようになった。悩みがありそうだったが、すぐには身辺のことは話してくれなかった。

 同僚は両親が運転する車で通勤していた。休憩の際は父親にメールで報告を欠かさない。年頃なのにいつも同じ服装で給料の使い道を尋ねると「全て生活費」。休日は家族とだけ買い物に行くという。両親の束縛が強いのだろうと思っていたある日、退勤前に慌てて髪を結っていた同僚が漏らした。「お父さんの好きな三つ編みにしないと叱られる」。異変を察した。

 「虐待受けとらん?」。思い切って尋ねると、同僚は小さくうなずいた。「それは暴力?」。さらに迫ると泣き崩れ、せきを切ったように話し始めた。幼少から父親に性的虐待を受けていること。母親に相談してもやまないこと。中学生の時に中絶手術も受けたという。それでも「家族が崩れるから」と誰にも相談できず、ひた隠しにしていた。

 女性は知人を通じて行政の担当者に相談。店長にも事情を話し、親にばれないように性暴力の対応機関へ連れて行った。程なく同僚は保護された。事態を知った父親が店に押しかけた。「かくまっとるやろう」。父親のけんまくに恐怖を感じた。

 「助けてくれてありがとう」。同僚の言葉に安堵(あんど)しつつ、長い間、声を掛けてくれる人がいなかったことが悔やまれた。「自分からは言えなくても、ずっと誰かに気付いてほしかったとやろうね」

 九州の児相関係者によると、虐待の疑いを持った周囲が児相に通告することは大事だが、可能な範囲で事情を聴き情報提供をしてくれると、緊急性を見極めたり効果的な対応が可能になったりする。近くに“見守りの目”があることで虐待する側にとっても一定の抑止力になるという。

 同僚の表情も明るくなった。「下手に関わって大丈夫かと迷いもしたけど、一歩踏み込んでよかった」

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