中国の伝説上の帝王尭(ぎょう)は治世50年に及び

西日本新聞 社会面

 中国の伝説上の帝王尭(ぎょう)は治世50年に及び、自身の政治を庶民が喜んでいるか確かめようとお忍びで街へ出た。そこで老人が食べ物を頬張り腹鼓を打ち、地面を踏み鳴らしながら歌うのを見た。「日が昇れば働き、沈めば休む。井戸を掘って水を飲み、田を耕して食う。帝王の力など私に何の関わりがあろう」-。

 「鼓腹撃壌」の故事だ。老人の歌は帝王をけなしているようだが、さにあらず。庶民が為政者のことなど意識せずとも幸せに暮らせるほど政治がうまくいっていることの表れだ。尭は満足したという。

 私はこの故事が好きだ。常に民の安寧を願い、自身の功績は誇示しない。為政者たるものかくあれかしと強く思う。だが現実は正反対のことばかり。ことにこの故事を生んだ国では自治や人権の保障を求める少数民族や弁護士、活動家を大量に拘束し、指導者に感謝するよう“再教育”しているという。尭が見たら何と言うだろうか。 (江藤俊哉)

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