かんぽ不正問題 経営責任逃れ許されない

西日本新聞 オピニオン面

 日本郵政グループによるかんぽ生命保険の不正販売問題が深刻化している。

 顧客に不利益を与えた恐れのある契約は過去5年で18万3千件に上る。かんぽ生命と販売を委託された日本郵便は、約3千万件の全契約について顧客の意向に沿った契約だったか調査する。対象者は約2千万人、国民のほぼ6人に1人という異例の規模となる。

 中には、年金暮らしの認知症の女性に複数の契約をさせ、収入を超える保険料を、貯金を取り崩させてまで払わせる悪質なケースもあった。保険料の二重払いや保険金の支払い拒否など顧客の被った不利益の解消に、まず全力を挙げる必要がある。

 保険商品は一般的に仕組みが複雑で比較検討が難しい。郵便局や募集人を信じ、勧められるまま保険を乗り換えた人もいるだろう。少しでも疑問があれば、かんぽ生命のコールセンターに問い合わせてほしい。

 それにしても謹厳なイメージがある郵便局でこれほど不正がはびこったのはなぜか。高い営業目標が課されたのが直接の原因だ。ノルマ達成のために一部の現場で不正が横行していた。

 かんぽ生命と日本郵便は以前から「保険募集品質の向上」をうたい、募集業務の適正化に取り組んできたという。しかし、必要な対策を取らなかったため不正が広がったのではないか。

 両社は、昨年11月分の乗り換え契約2万1千件を内部調査し、同じ種類の保険への乗り換えが5800件あることを今年の早い段階で把握していた。顧客の不利益になるケースが多数含まれている疑いが強い。こうした情報を外部に公表しないまま、日本郵政はかんぽ生命株を4月に追加売却していた。

 経営責任について日本郵政の長門正貢、かんぽ生命の植平光彦、日本郵便の横山邦男の3社長は「認識が甘かった」と釈明し、問題の重大さを認識したのは6月になってからと責任逃れに終始している。かんぽ保険の不正販売については昨年5月の郵政民営化委員会の会議でも取り上げられていた。「認識が甘かった」では済まされない。

 この1カ月余りで日本郵政の株価は大幅に下落し、上場来安値を更新した。株式の57%は国が保有しており、その評価額は5千億円以上目減りした。国民の損失に他ならない。国は秋にも日本郵政株を追加売却し、東日本大震災の復興財源1兆2千億円を確保する計画だったが、株価下落で難しくなっている。

 100年を超す歴史に培われた郵便事業、郵便貯金、簡易保険のブランド力は大きく損なわれた。経営陣は重く受け止め、その責任を明確にすべきだ。

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