戦争と平和 絵本で考える 〈これからも、ずっとへいわがつづくように〉 平易な表現、静かな問い 司書29年 白根さん 「親子で一緒に読んで」

西日本新聞 くらし面

 戦争や平和に思いをはせたい8月。戦後74年、戦争を知らない世代が増える中で、どう語り継いでいくか。絵本は平易な文章とイラストで、子どもだけではなく大人にも戦争の理不尽さやむごさ、平和の尊さを訴え掛ける。福岡県立図書館などで29年間司書を務めた佐賀女子短大名誉教授の白根恵子さん(69)に、親子で読んでほしい絵本を選んでもらった。

 戦争に関する絵本は、かつては悲惨さをリアルな描写で伝えたものが多かった。白根さんは近年出された本について「なぜ戦争が起こるのか、平和を守るにはどうすればいいかなどを静かに問い掛ける本が増えていると感じる」と話す。

 白根さんがまず薦めるのは「へいわってすてきだね」(ブロンズ新社)。2013年6月の沖縄全戦没者追悼式で小学1年の安里有生(あさとゆうき)君が朗読した自作の詩に、長谷川義史さんが絵を付け、14年に出版された。安里君の真っすぐな平和への願いが、与那国島の青い海や馬などとともに描かれる。

 <これからも、ずっとへいわがつづくように/ぼくも、ぼくのできることからがんばるよ>という詩の最後に白根さんは心を打たれるという。「平和は誰かがくれるものではなく、平和のために何ができるか考えることが大切。それに小学1年生が気付いていることが素晴らしい。純粋な言葉は同じ年頃の子どもにも伝わりやすい」

 同じ出版社から今年3月、谷川俊太郎さんによる「へいわとせんそう」も出された。<へいわのどうぐ>を鉛筆、<せんそうのどうぐ>を銃で表すなど、平和と戦争をシンプルな絵で対比させた。一方で<みかたのかお>と<てきのかお>はほとんど見分けがつかない。白根さんは「敵対していても同じ人間なんだということを子どもに伝えながら読んでほしい」と話す。

 白根さんは終戦の4年後に生まれ、朝鮮半島から命からがら引き揚げた時の話を両親によく聞かされた。本土空襲で大けがをした伯母の傷痕を見たこともある。“戦争の怖さ”は日常の至る所に感じられた。

 対して今の子どもたちは、祖父母は戦後生まれが多く、体験者に話を聴く機会はほとんどない。白根さんは学童疎開や食糧難など子どもたちの“等身大の戦争”を描いた作品も薦める。「戦争中は子どももつらい思いをしたことを、主人公に寄り添いながら親子で話し合うのもいいでしょう」

 今年5月に出版された「字のないはがき」(小学館)は、故向田邦子さんのエッセーを角田光代さんが子ども向けにリライトした。戦争末期、疎開する小1の妹に父は宛名を書いたはがきをたくさん持たせ、元気な日は丸を書いてポストに入れるよう伝える。丸は次第に小さくなり、途絶える。百日ぜきで痩せて戻ってきた妹を父は抱き締め、声を上げて泣いた。

 「おとなになれなかった弟たちに…」(偕成社、1983年)は福岡市出身の俳優で2014年に亡くなった米倉斉加年(まさかね)さんが、弟を栄養失調で亡くした体験を基にした。おなかがすいて弟の大切な粉ミルクを何度も盗み飲みしたことに触れ、<ぼくはひもじかったことと、弟の死は一生わすれません>と結ぶ。

 白根さんが最後に挙げるのは、米国の作家親子による絵本の翻訳版「この計画はひみつです」(鈴木出版、18年)。ニューメキシコ州の田舎町に著名な科学者が集まり、住民を立ち退かせて始まった極秘裏の計画は…。広島、長崎という結末を知る読者にとって、淡々とした文章とのどかな絵がかえって恐怖心をかき立てる。後書きに3ページを割き、原爆がもたらした悲劇を詳述している。

 「原爆投下を正当化する論調が強い米国で、米国人作家が手掛けたことも大きな意味がある」と白根さん。原爆を理解している小学校高学年以上に向いている。「原爆は知っていても、その前に何が起こっていたかを知る人は少ない。大人も読んでほしい」

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