日常の中の水俣病写す 写真家・豊田さん作品展 つなぎ美術館

西日本新聞 熊本版

 水俣市在住の写真家豊田有希さん(31)の写真展「あめつちのことづて」が、津奈木町のつなぎ美術館で開かれている。水俣病被害者の暮らしにレンズを向け、山間部で受け継がれる風習などに焦点を当てる豊田さん。7月27日のギャラリートークでは、被写体への思いや通い続ける地域の魅力などについて語った。 

 豊田さんは熊本市出身。高校時代にカメラを手にした。2012年1月、「民間医師団の検診で山間部に住む人の約半数に水俣病の症状がみられた」という新聞記事に衝撃を受けた。水俣病を海岸での出来事と捉えていた豊田さんは、「撮りたい」という衝動に駆られ、記事にあった芦北町黒岩をバイクで訪ねた。

 自宅から2時間以上かけて通ううち、住民たちと親しくなった。仲介してくれたのが当時区長だった橋本明さん(68)。公民館で作品をスライド上映し、住民たちの警戒心を解いてくれた。「今はもう、地域に自然な形で溶け込んでいる」と橋本さん。豊田さんは「日常の中に水俣病が紛れていることを知り、日常の一部として捉えたいと思うようになった」と話す。

 「肌感覚で、より地域に入りこみたい」と考え、15年秋には水俣市に移住。月1回ペースで黒岩に向かい、水俣病被害者を含む住民たちの表情や、昔から続く風習などを追っている。

 会場に展示した作品47点は全てモノクローム。「(極限まで)情報がそがれ、単純に写真を見ることができる」ので、好んで現像しているという。高齢夫婦の食事風景や、地域で信仰する「山の神様の祭り」、住民たちが寄り合ってはしゃぐ宴会での一コマ、二眼レフカメラを用いた肖像写真…。「指先が震える」と言い、自身の水俣病について語りだした高齢女性の両手を捉えた作品もある。

 「10年ぐらいかけて地域の変化を撮影し、人々の存在を写真に残していきたい」と豊田さん。会期は25日まで。水曜休館だが、14日は開館する。つなぎ美術館=0966(61)2222。

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