ミャンマー改憲巡り攻防 与党、軍の権限低下狙う 軍側、審議本格化を拒否

西日本新聞 国際面

 【バンコク川合秀紀】ミャンマーの国会で、国軍の強い権限を規定する憲法の改正を巡る動きが熱を帯びてきた。国軍の政治関与を薄めたいアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相率いる与党国民民主連盟(NLD)が主導して7月30日に上下両院議員が改憲案の議論を始めたが、地元メディアによると国軍が指名した軍人議員らは直前になって不参加を決定。来年の総選挙を見据え、双方の駆け引きが続く見通しだ。

 現行憲法は軍事政権下の2008年に制定され、上下両院ともに議席の25%を軍人に割り当て、改憲には両院議員の75%を超える賛成を必要とするなど、国軍が権力を維持できる仕組みになっている。NLDは15年の総選挙で「非民主的」と訴え、改憲を公約に掲げて大勝したが、政権発足後は国軍との摩擦を避けるため改憲議論を控えてきた。

 だが今年1月、NLD議員が上下両院議員で改憲案を議論する委員会の設置を国会に緊急提案し、可決。地元メディアによると、委員会は7月半ばに少数民族政党やNLDなどから約3700項目の改憲案を集約し、30日に国会で議論を始める予定だった。NLDは改憲に必要な議員の賛成数を減らすことなどを提案しているもよう。

 国軍や軍人議員側は委員会設置などの改憲手続き自体が憲法違反と主張し、改憲草案作成につながる国会での本格審議を拒否した形だ。

 NLDは約6割の議席を握るが、改憲には親軍派政党のほか軍人議員の賛同が必要なため、実現は困難。一方、NLD政権は、イスラム教徒の少数民族ロヒンギャ難民問題の混迷や他の少数民族武装勢力との和平交渉の停滞によって、世論の支持が低下している。

 京都大東南アジア地域研究研究所の中西嘉宏准教授は「来年秋の総選挙を控え、NLDは勝算はなくても公約である改憲に動かなければ国民の支持に影響が出るとみているのではないか」と指摘。その上で「NLDと国軍トップで合意形成の努力がなされなければ、改憲の可能性は極めて低い」とみている。

【ワードBOX】ミャンマーの憲法

 1988年のクーデター以降、全権を掌握した軍事政権の下、2008年に国民投票を経て制定された。15章457条からなる。上下両院ともに議席の25%を選挙ではなく国軍が指名する軍人議員に割り当て。非常時には国軍最高司令官に全権を委譲でき、国防相などの主要閣僚も同司令官が任命すると規定。外国籍の家族がいる人の大統領資格を認めていないため、英国籍の子どもがいるアウン・サン・スー・チー氏は大統領に就けない。

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