進行した腫瘍に、抗がん剤と油性造影剤注入 肝がん独自療法 全国に発信へ 久留米大病院の「New FP療法」 治療420件、奏功率7割

西日本新聞 医療面

NewFP療法の仕組み 拡大

NewFP療法の仕組み

「治療法の普遍性を確立させたい」と語る久留米大先端癌治療研究センターの古賀浩徳医師

 久留米大病院(福岡県久留米市)は、独自に考案し、進行した肝がん(肝細胞がん)への効果が高いとする肝動脈注入化学療法の一つ「New FP療法」の普及に取り組んでいる。がんが縮小するなどの奏功率は7割に上っており、昨年5月以降、全国の医療関係者を招いた研究会を重ねている。

 厚生労働省の統計(2017年)によると、肝がんは日本人男性のがんの部位別で、肺、胃、大腸に次いで死亡数が多い。初期段階なら切除できるが、肝臓の別の場所に再発しやすい特徴があり、再発を繰り返すうちに治療が難しくなる。進行した場合はがん細胞を狙い撃ちにする分子標的薬による治療もあるが、英医学誌ランセット掲載の論文によると、がんが縮小する奏功率は1~4割という。

 そこで抗がん剤を直接、がんに送り込む治療法として、体外からカテーテル(医療用チューブ)を血管内に挿入して腫瘍まで届かせ、抗がん剤を注入する「Low-dose FP療法」がある。ただ、血流によって抗がん剤が腫瘍を通り過ぎて全身に回り、希釈されて効果が薄まっていた。

 これを改良したのが「New FP療法」。久留米大の関連病院に勤務していた永松洋明医師が約15年前に考案。血管内にとどまりやすい油性の造影剤(画像診断用の薬剤)を抗がん剤に混ぜて注入することで、造影剤が腫瘍の血管内に付着し、周辺により長く抗がん剤をとどまらせることが可能になった。

 肝がんの中でも、腫瘍が分散せずに固まりになっている場合や、肝臓に流れ込む静脈(門脈)内に腫瘍ができる「門脈腫瘍栓」に効果が高く、がんが切除できる大きさまで縮小したケースもあった。これまでに久留米大病院で約250件、関連病院を含めると約420件の治療例があり、奏功率は7割に上った。

 患者負担は症状にもよるが、3割負担なら30万円程度という。1回当たりの注入は5日間に及び、カテーテルを挿入する脚部の皮下に器具(リザーバー)を埋め込むため、感染症への注意が必要となるなど、手術法がやや煩雑で準備に手間がかかることから、広く普及していなかった。

 先月8日にあった研究会には順天堂大(東京)、大分医療センター、熊本セントラル病院など、全国約20の大学や病院、製薬会社から約50人が集まり、研究発表や活発な意見交換を行った。責任者で、久留米大先端癌(がん)治療研究センター肝癌部門の古賀浩徳・部門長(56)は「血管に侵入した悪性度の高い肝がんに対して強みがある。他の治療法と比べた優位性や普遍性を確立させ、普及につなげたい」としている。

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