初動防除と国際連携が大切 阿部芳久氏

西日本新聞 オピニオン面

九州大大学院比較社会文化研究院教授阿部芳久氏 拡大

九州大大学院比較社会文化研究院教授阿部芳久氏

◆外来種の害虫

 侵入が警戒されていたツマジロクサヨトウというガの幼虫が7月、日本で初めて九州・沖縄の6県で主にトウモロコシからみつかった。本種の特徴は寄主範囲の広さと飛翔(ひしょう)能力の高さである。本種の寄主植物として8科80種以上が記録され、雌の成虫は羽化してから産卵するまでに500キロ以上、飛翔するという報告もある。そのため、農林水産省と都道府県が全国で本種の分布と被害の有無を調査している。

 ツマジロクサヨトウは南北アメリカ大陸の熱帯および亜熱帯地域が原産で、2016年にはアフリカ大陸で、18年にはアジアでは初めてインドで発生が確認された。中国では今年1月に雲南省で見つかり、現在は中国国内で分布を拡大しつつあるという。寄主植物に付着した本種のヒトによる日本国内への持ち込みとともに、中国大陸から日本への成虫の飛来にも警戒が必要である。

 なぜ日本は頻繁に外来種の害虫に脅かされるようになったのか。主な原因として、世界中で国境を越えた経済的な結びつきが強まり、輸送手段の飛躍的な発達ともあいまって、人や物資が大量かつ迅速に、害虫の自力による移動距離を越えて運ばれるようになったからだと考えられる。例えば2年前に世間を騒がせ、今も脅威であるヒアリは、船舶や飛行機で国内に運ばれた国際貨物から発見された。

 今後、われわれは外来種の害虫にどのように対応すべきであろうか。貿易の自由化が進めば、外来種の害虫が日本に侵入する機会はさらに増えるに違いない。まず、侵入が確認されたら侵入地点とその周辺に加え、侵入が予想される他の地域でも、発生状況を速やかに調査する必要がある。そして発生が確認された場合には、定着させないように緊急に防除しなければならない。次に、定着が確認された場合は、害虫の発生地の拡大を防止するため、地域を指定して徹底的な防除が必要となる。それには地域住民の協力が不可欠なので、国や自治体は発生状況や防除手段等の情報を迅速に公表することが求められる。さらに、防除対策を構築する際に、日本における被害、越冬の可能性、殺虫剤感受性等の調査に加え、その害虫が既に侵入・定着している国々のみならず原産国との情報交換等、国際連携が望まれる。

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 阿部 芳久(あべ・よしひさ)九州大大学院 比較社会文化研究院教授 1962年生まれ、東京都出身。九州大大学院農学研究科修了(農学博士)。2007年から現職。専門は昆虫学(分類学・生態学)。

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