日韓交流で関係改善願う 韓国側有志、釜山市長説得

西日本新聞 社会面

日韓両国の参加者が当時の衣装をまとい、再現した朝鮮通信使のパレード=4日午後、長崎県対馬市 拡大

日韓両国の参加者が当時の衣装をまとい、再現した朝鮮通信使のパレード=4日午後、長崎県対馬市

 日韓関係が悪化の一途をたどる中、長崎県対馬市で4日、日韓合同による朝鮮王朝の外交使節「朝鮮通信使」の行列が再現された。日本による輸出規制強化をきっかけに、対馬を訪れる韓国人観光客は激減しており、地域経済に暗い影を落としている。対馬側の関係者は「行列ができてホッとしたが、先行きは不透明だ。両国が早く仲直りしてほしい」と早期の関係改善に期待を込めた。

 「本当によく来てくれた。本場の音楽と踊りがあると行列が一層引き立つ」。炎天下の沿道に駆けつけた観客は、韓国世論の反対を恐れず参加を決断した韓国側の参加者に笑顔で手を振った。家族と一緒に対馬を旅行中の自営業キム・ジョンミンさん(48)も「韓日関係が悪いので規模が小さくなったと聞いた。でも、地域交流を続けるのは良いこと」と歓迎した。

 対馬市と釜山市の交流は、朝鮮通信使に関する資料が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)登録につながった原点でもあり、双方の関係者の思い入れは強い。しかし、釜山市長が7月、日本との交流を再検討すると発表。韓国側の参加は危うい状況だった。

 そこで動いたのは、韓国側の有志だった。両市の交流に長年携わってきた釜慶大元総長の姜南周(カンナムジュ)さん(80)は「交流はやるべきだ」と釜山市長を説得し、参加容認を取り付けた。NPO法人「朝鮮通信使縁地連絡協議会」(対馬市)の松原一征理事長(74)は「姜南周先生の進言で行列が再現できた」と感謝する。韓国側参加者も「行列参加により国内で逆風が吹くことを心配していたが、結果的に良かった」と話した。

 しかし、交流継続の陰で、対馬市の観光産業は苦境に直面している。旅館を経営する対馬旅館組合長の熊本裕臣さん(68)は、韓国の団体客を中心に受け入れていたが、日韓関係の悪化で7月以降、予約のキャンセルが相次いだという。「旅館を約50年やっているが、まつり期間中の宿泊客ゼロは初めて。客足がいつ戻るのか分からない。経営戦略を変えなければ」

 対馬観光物産協会の江口栄会長(64)も「日韓対立は長期化するのではないか」と不安を隠せない。昨年、対馬市を訪れた韓国人観光客は過去最多の約41万人を記録しただけに、地域経済への打撃は大きい。

 日韓関係改善の兆しが見えない中、朝鮮通信使の正使役を務めた釜慶大の南松祐(ナムソンウ)名誉教授(65)は最後に、「国書」に模したメッセージを読み上げた。「皆さまに釜山市民の真の友情をお伝えするよう、うかがいました。文化の力こそが政治的、経済的葛藤を解決する鍵になれるものです」

PR

PR

注目のテーマ