受動喫煙対策 行政機関がまず手本示せ

西日本新聞 オピニオン面

 受動喫煙防止対策を強化する改正健康増進法が7月に一部施行され、この夏から学校や病院、行政施設などの敷地内が原則禁煙になった。

 受動喫煙による健康リスクは科学的に証明されている。国内では受動喫煙が原因の脳卒中や肺がんなどで年間1万5千人が死亡しているという推計もある。来年4月の全面施行に向け、まずは着実に実施し、新たな喫煙マナーを社会に根付かせることが肝要だ。

 敷地内が原則禁煙になったのは、健康影響を受けやすい病気の人や子ども、妊婦などが出入りする施設である。ただし、利用者が通常は立ち入らず、分煙を徹底できる区画に限って、屋外喫煙場所を設ける「例外措置」が認められている。

 国の2017年調査によると、小中学校の約9割、病院(20床以上)の約6割が敷地内禁煙だった。法律が改正された現在、いずれもさらに増えていることは間違いないだろう。

 東京五輪・パラリンピックの開催都市である東京都は都庁敷地内の喫煙所を全廃した。条例で改正法よりも厳しい規制を進めており、9月から幼稚園や保育所、小中高は屋外でも喫煙所設置が認められなくなる。

 九州では、佐賀県が本庁、各地の総合庁舎、児童福祉施設など全36施設を敷地内禁煙に踏み切った。喫煙所などを利用した人の衣服に付着した有害物質が拡散することで発生する「残留受動喫煙」(三次喫煙)の防止も考慮したという。

 ただし、残念なことに、原則を順守して敷地内禁煙を選ぶ自治体はそう多くはない。九州では、佐賀を除く6県すべてが屋外喫煙所を認めている。国の省庁も本庁舎の敷地内に喫煙所を設けるところが多い。

 当然ながら改正法も国も、屋外喫煙所の設置を推奨しているわけではない。改正法は、国や地方自治体が受動喫煙の防止措置に取り組むよう努めることを求めている。全面施行に向けて手本を示すべく、率先して敷地内禁煙を進めるべきだ。

 世界保健機関(WHO)は、医療機関や学校など人が多く集まる場所の禁煙義務の有無を調査し、4段階で評価している。

 日本は最低ランクだが、改正法が全面施行された後も、1段階しか上がらないとされる。企業などでは屋内喫煙所の設置が認められ、小規模な飲食店は喫煙可も選ぶことができる緩い規制にとどまるためだ。

 最高ランクに評価される国は50カ国以上に上る。日本の受動喫煙対策は国際水準からほど遠いのが実情だ。法改正はあくまで出発点と位置づけ、今後も対策を強化する必要がある。

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