「トランプ氏 核ボタン押しかねない」 米国で核廃絶イベント

西日本新聞 総合面

 広島、長崎への原爆投下から74年を迎えるのに合わせ、米国で核廃絶を求める集会が相次いで開かれた。米国はロシアと結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約から2日に離脱し、同条約が失効すると早速、新型ミサイル開発の加速化を表明。小型核の製造も進めるなど軍拡の姿勢を強める一方だ。トランプ大統領は核兵器について「使う必要がないよう願う」と述べはするものの、市民からは「予見不能な大統領だけに核のボタンを押しかねず不安だ」との声も上がった。 (ニューヨークで田中伸幸)

 ニューヨークの日本総領事館前では5日(日本時間6日)、米国の反核団体などが集会を開き、参加した約70人が原爆の犠牲者に祈りをささげ「ノーモアヒバクシャ」と連呼。日本政府に対して米国の「核の傘」依存からの脱却を求めるなど、核兵器廃絶の必要性を通行人に訴えかけた。

 INF廃棄条約を失効させ「米国の核戦力は(世界で)常にリードしなければならない」と主張するトランプ氏。その指導力に対しては「米国は軍拡競争ではなく、世界の平和への取り組みをリードすべきだ」(74歳男性)などと批判が飛び交った。

 トランプ氏はロシアだけでなく中国も交えた軍縮協議など、新たな枠組みづくりに前向きな発言を繰り返しているものの、参加者からは「信用できない」と懐疑的な意見が続出。生後5カ月の女児の母マナスラさん(30)は「発言に具体性がなく、政権内に対外強硬派が多い限り全く期待できない」と切り捨てた。

 米国の核問題の専門家らは軍拡への歯止めを欠く状態が長引くことで、欧州だけでなく東アジアでも中距離核などの配備が進み「世界のさらなる不安定性につながりかねない」(核軍縮に詳しいジョージワシントン大のスクアソーニ研究教授)と懸念を強める。

 そうした中で市民からは軍拡競争が加速する結果、トランプ氏が核兵器を使おうとするのではないかと「暴走」を危ぶむ声も。

 ニューヨークの公園で4日に開かれたイベントでは広島、長崎の被爆者の実態などを説明する約20枚のパネルが展示され、散歩中の人たちが足を止めた。

 米国の若者は原爆について詳しく知らないと語る女性のミシーさん(34)は「核兵器を使う恐ろしさをトランプ氏は分かっているのだろうか。いつか悲劇が起きるのではないかと心配だ」と表情を曇らせた。

 ただし、米国の保守層などには、小型核など「使いやすい核兵器」の開発を急ぐトランプ氏に対し、抑止力の向上につながると評価する意見も少なくない。実際、イベントの最中に「(反トランプの)政治的な宣伝だ」と吐き捨てるように言って去った男性もいた。

 イベントを企画したヘデマンさん(74)は「兵器の近代化など核開発はオバマ前大統領も進めていて、今に限った話ではない」と指摘した上で、こうつぶやいた。「反核運動を50年以上しているが、トランプ氏ほど行動が読めない大統領はいない。核のボタンを押す事態になった時、政権内に誰か阻止してくれる人がいてほしいと祈るばかりだ」

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