幸福な死を迎えるために――現役看護師の女性僧侶による看取り指南本

西日本新聞

 人は必ず死ぬ。その最期を自宅で迎えたいと望んでも、実際には多くの人が病院で亡くなる日本。だが、これからは自宅で亡くなる人が増えていくという。本書によると、年間の死者数が130万人を突破し、さらに増え続ける日本では、病院のベッドがますます不足していくそうだ。好むと好まざるとにかかわらず、自宅で最期を迎えるしかないかもしれないのだ。そのとき、本当に自宅で、自分たちで、最後を迎えられるのだろうか。

 本書は、看護師であり高野山で修行した僧侶でもある著者による、自宅での看取り指南本である。延命治療をせず自然な死を迎える際に起こる心と体の変化が、3か月前、1か月前、数日前、24時間前と時系列で詳細に描かれている。また、一緒にいる時間を作って話を聞いたり、亡くなりつつある人とときどき呼吸を合わせたりなど、看取る立場の心構えや行動についても参考になる内容となっている。医学に知識のない人にも理解しやすい言葉で書かれており、自分や身近な人の死に方を考えるきっかけや気付きを与えてくれるだろう。夫を自宅で看取った著者の経験も綴られているからか、言葉一つひとつがより一層心に刻まれるのだ。

 著者は、人生に幕を下ろそうとする人、すなわち『死にゆく人』を『着地間近な人』『着地態勢に入った人』などと表現する。この言葉からも、死をより身近なものにしよう、人の心に寄り添おうとする著者の優しい人柄が感じられる。着地のステップを理解できれば、それぞれの死をより尊重できるようになるのではないだろうか。

 人は、死にゆく人とどれだけ誠実に向き合ったところで、いくばくかの後悔が必ず残るものである。本書は、そんな後悔に苛まれないよう準備する手助けをしてくれる指南本であり、身近な人を看取った後に顔を上げて歩く勇気をくれる一冊だ。生と死が疎遠になりつつある現代に生きるすべての人におすすめしたい。本書から得る知識が死に直面したときの一助となってくれることだろう。

 

出版社:光文社
書名:死にゆく人の心に寄りそう
著者名:玉置妙憂
定価(税込):821円
税別価格:760円
リンク先:https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334043919

西日本新聞 読書案内編集部

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