古里平戸にメキシコ料理店 大阪からUターンの堤さん

西日本新聞 長崎・佐世保版

 平戸市崎方町の市観光交通ターミナルの向かい、海鮮食堂と船具店の間に異色の店がある。ラテン音楽に彩られた人生の長旅から古里へUターンした堤三郎さん(67)が営むメキシカンバー・レストラン「パンチョ」。入り口のメキシコ国旗に迎えられ、ドアを開けると-。

 かつてのメキシコ通いが風貌に凝縮したのか、堤さんはどこかエキゾチックな顔立ち。ついついギターに手が伸びがちな夫のそばで大阪出身の妻、木綿子(ゆうこ)さん(57)が機敏に働く。

 堤さんは地元の猶興館高を卒業後、神戸市の会社に就職。5年間勤める間にメキシコ料理店に足しげく通い、スパイシーな料理と陽気なラテン音楽に魅入られた。やがて会社を辞めて店に入り、3年の修業期間を経てメキシコシティーへ。

 「ホテルのナイトクラブのオーディションに合格した。3カ月間、夜ごと『ラ・マラゲーニャ』『べサメ・ムーチョ』などトリオ・ロス・パンチョスの名曲を歌った」

 日本人がスペイン語で歌うのは珍しかった時代。伸びのある歌声と艶っぽい高音に「ブラーボ!」と称賛の声が上がった。次第に心持ちまでラテンの血に染まるようだった。

 ラテン音楽の魅力について「女性に対し、日本人男性なら恥ずかしくて口に出せないような愛の言葉を語り掛ける。人生を謳歌(おうか)するラテン民族の魂を感じる」と話す。帰国後は大阪で過ごし、昨年12月、平戸に自分の店を出した。

 客がタコスやチリコンカンをつまみに、テキーラやテキーラベースの青いカクテル「平戸ビーチ」で程よく酔ったころ、堤さんの歌が始まる。「その名はフジヤマ」を披露する前に「この歌はトリオ・ロス・パンチョスのメンバーのチューチョ・ナバロが、日本で初公演するための機上から眺めた富士山の気高い姿に触発されて作曲しました」と解説を添える。

 美声が客の酔い心地に拍車をかける。知る限りのスペイン語が飛び交うこともある。赤ら顔のにわかラテン系には、夜のとばりが下りた平戸港がカリブ海や地中海と重なっているのかもしれない。

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