何の疑いもなく読み

西日本新聞 社会面

 何の疑いもなく読み、感動した名作に、実は矛盾があった。太宰治の「走れメロス」。残虐な王に意見したメロスは処刑を命じられる。処刑前に妹に結婚式を挙げさせようと、親友を人質に置き、3日間で戻ることを約束する。守らなければ親友が殺される。正義とは何か、友情とは-。

 数年前、夏休みの自由研究でこの作品の矛盾点を指摘したのは愛知県の中学生だった。10里(約39キロ)の道を往復したメロス。往路は一睡もせず、妹がいる村に急いだ。文章から推測すると、午前0時に出発し、着いたのは午前10時。計算すると時速3・9キロ。歩く程度の速さだ。山賊と戦った復路はもっと遅かった。

 「メロスは走った。(中略)わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った」。この言葉に心を熱くし、引き込まれたのだが。実際は「歩くメロス」か「走れよメロス」か。小説の話とはいえ、中学生の探求心にうならされた。 (山上武雄)

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