なぜ?脅し文句に「ナガサキ」 米ドラマで使用 翻訳関係者「初めて聞いた」

西日本新聞 社会面

 米人気ドラマ「ディス・イズ・アス」のせりふで「Nagasaki」が「破壊する」「つぶす」という意味の動詞として使われていた。製作側はなぜこの表現を使ったのか。背景に何があるのだろうか。

 広島、長崎。二つの被爆地を比べると国際的関心は広島に集中しがちで、原爆ドームという象徴的な被爆遺構のせいか、知名度もより高い。では今回なぜ「ナガサキ」だったのだろう。

 ドラマの場面は、テレビ局の代表が、番組を降板しようとする若手俳優に、逆らうなら業界にいられなくすると脅すシーン。二度と立ち上がれないよう、完膚なきまでにたたきつぶす-。ナガサキはそうした意味合いで使われている。

 先の大戦で日本は、広島、長崎への原爆投下5日後、無条件降伏を決定。米国では長年、原爆が日本降伏を導いたという政府の宣伝が信じられてきた。この「原爆神話」を下敷きに、降伏を決定的にした「駄目押しの2発目」である長崎原爆をあえて使ったと考えられる。

     □□

 こうした表現は米国でも決して一般的ではなく、ドラマの翻訳関係者も「初めて聞いた」「驚いた」と感想を漏らした。

 一方、米国のオンライン俗語辞典サイト「Urban Dictionary(アーバン・ディクショナリー)」には「Nagasaki」の用例が十数種あり、電子レンジで加熱が不十分だった場合再び“チン”すること、という例が見つかった。ただし、このサイトは誰でも語句や定義を登録できる投稿式。利用者はその言葉に賛成・反対を意思表示できるが、この用例への賛否は30件ほどで、信頼性は高くなさそうだ。この種の俗語は広島に関するものが多かった。

 製作側が、あえて視聴者が耳慣れない表現を使い、強い印象を残すことを狙った可能性もある。

     □□

 原爆投下に関する近年の世論調査によると、米国でも「軍事的に不要だった」「道徳的に非難に値する」という見方は徐々に広がっている。日本降伏には原爆よりむしろソ連の対日参戦の影響が大きかったといった歴史家の指摘が若年層、知識層を中心に一定程度受け入れられているためだ。それでも「原爆投下は正しかった」という考えは米国社会でなお根強い。

 日本版DVDの発売元、20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン(東京)マーケティング本部の佐藤まゆみTV部長は「個人的な考え」とした上で「『ナガサキする』と言い放った人物はテレビ局の経営陣でいわば知識層。無知ではないのに、意図的に、驚くような不快な発言をする『究極の嫌なヤツ』というキャラクター設定上の狙いがあったと思う。作品自体は人の生き方の多様性を認めようという物語なので、全体を通して見ていただきたい」と語った。

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ