「ナガサキする」映画評論家・町山智浩さんの見解は? 「背景に米国社会の現実」

西日本新聞

「THIS IS US」シーズン1の一場面ⓒ2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 拡大

「THIS IS US」シーズン1の一場面ⓒ2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 米国の人気ドラマ「THIS IS US(ディス・イズ・アス)」のせりふで「Nagasaki(ナガサキ)」が「破壊する」「つぶす」という意味の動詞として使われていた。この表現をどう受け止めればいいのか。米国在住の映画評論家、町山智浩さんに電話で話を聞いた。

 -米国で「ナガサキ」を「破壊する」という意味で使うことはあるんですか。

 「使わない言葉ですね。こちらに住んで20年以上になりますが、聞いたことがない」

 -ではなぜ?

 「おそらく脚本家がキャラクターの暴力的な性格を表現するには、広島では弱いと思ったんでしょう」

 -弱い…

 「長崎への2発目の原爆投下は、対日戦の戦略上必要のない、道義的にも許されるべきではないものだったので。徹底的につぶすと言うときに広島ではまだ表現が弱い、だから『ナガサキ』だったんでしょう」

 -米国の視聴者は理解できるんでしょうか。

 「分かる人は多くないでしょう。原爆に関する歴史について知識がある人はそんなに多くないと思います。強調するために、視聴者が引っ掛かる言葉としてわざと言わせているんだと思います」

 -製作側の狙いだと。

 「脚本家のダン・フォーゲルマンさんはまだ40代で、作品歴を見るとピクサーのアニメ映画を多く手掛けています。弱者の立場に寄り添った作品を作ってきた人。ですから、悪質なキャラクターを強調するため、普段言わない特別な言葉をあえて使ったんでしょう」

 「ただ長崎の認知度は以前より高くなっているとは思います。映画『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年公開)にも長崎への原爆投下シーンがあって、興行的にも当たってるので」

 -製作側は原爆投下を肯定する立場ではない?

 「悪人ですから、言った人は。情け容赦ない悪い人の言葉ですよ。『ナガサキするぞ』という言葉はものすごく悪のものとして、批判的に描いていると受け取れます」

 「ただ米国には、こういうタイプの人もいるんですけどね。実際にいることはいます。この国では原爆投下の日になると『原爆投下は正しかった』という言説がネットでどっと流れる現実があります。テレビのコメンテーターでもそうした発言をする人がいる。そういう人の一人、ということですね。背景にはそうした米国社会の現実がある、という言い方もできるでしょう」

     ◇

 まちやま・ともひろ 映画評論家、コラムニスト。1962年生まれ。出版社勤務を経て97年に渡米。カリフォルニア州・バークリー在住。近著に「『最前線の映画』を読む」。

【ワードBOX】米ドラマで「ナガサキする」
 米人気ドラマ「THIS IS US(ディス・イズ・アス)」のシーズン1(計18話)第2話で、テレビ局のトップが番組降板を申し出た俳優に「もし降りるなら、君のキャリアを徹底的につぶすしかない」などとどう喝する場面で、「Nagasaki」が「破壊する」「つぶす」という意味の動詞として使われていた。

 このドラマは米国では2016年9月からシーズン1(18話)を放映、エミー賞の主演男優賞も受賞、続編の製作が続いている。日本でもNHKがシーズン1を総合で、BSプレミアムでシーズン2を放映。アマゾンプライムビデオなどネット配信でも視聴できる。


 


 

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