山の日 「恩恵と脅威」を学びたい

西日本新聞 オピニオン面

 きょうは国民の祝日法に基づく「山の日」である。日本山岳会などの働き掛けをきっかけに、2016年に祝日の仲間入りした。

 8月11日は特に山に由来のある日ではないが、夏山シーズンのイメージなどから決まった。山に親しみ、恩恵に感謝する日とされる。

 昨今は戦後何度目かの登山ブームといわれる。頂上を目指すピークハントだけでなく、途中で弁当を開く楽しみだけで引き返したり、神々しい山容を車の中から眺めるために出掛けたり、といった人も増えている。

 山道を走るトレイルランニングのほか、最近では標高2千メートル級の山でタイムを競うスカイランニングも人気を集めている。まさに親しみ方は多彩である。

 一方で、その脅威についても十分に知り、日頃から用心しておく必要もある。

 7日夜には、周辺に軽井沢など観光地が多い浅間山(群馬、長野県)の山頂火口で小規模な噴火が発生した。気象庁は噴火警戒レベルを3(入山規制)とし、火口から約4キロ圏内で噴石や火砕流への警戒を呼び掛けた。噴火の前兆現象は観測されなかったという。

 阿蘇山では3年前、爆発的噴火の前兆と取れる動きがあったが、過去のデータ蓄積に乏しく予測できなかった。両方のケースは今後に課題を突き付けた。

 登山家で作家の深田久弥は「日本百名山」(1964年)で、「わが国で火山の代表といえば、浅間と阿蘇である」と記した。山体の美しさとともに爆発の歴史について、畏敬の念を込めてつづっている。

 「百名山」では品格、歴史、個性を備えた山を選んだという。九州の山は六つ入っている。うち四つは活火山だ。阿蘇山、九重山、霧島山、開聞岳である。ほかに雲仙岳、桜島など九州には計17の活火山がある。

 1995年には、人気の高い九重山系の硫黄山が257年ぶりに噴火した。噴火した場所は登山ルート沿いにあり、負傷者は出なかったが、登山者にその脅威を見せつけた。

 今年5月には、世界自然遺産の屋久島(鹿児島県)で、局地的な大雨に見舞われた300人以上の登山者が孤立状態で一夜を明かした。一大遭難事故の恐れもあった出来事を教訓として記憶に刻みたい。8月は台風の季節でもある。無謀な計画は慎み、少しでも危険を感じたら、勇気を持って引き返したい。

 登り慣れた低山でも、日没の時間帯や体調によっては、道迷いは簡単に起き、遭難につながる。「生きた地球」そのものである山の恩恵と怖さを同時に学びたい。

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