入院患者に特化した小児科 福岡市の福大西新病院 年中無休で受け入れ 近隣の開業医と連携 医師不足地域のモデルに

西日本新聞 医療面

小児科医の間で情報共有し、全ての入院患者の状況を把握している=福岡市早良区 拡大

小児科医の間で情報共有し、全ての入院患者の状況を把握している=福岡市早良区

 外来診療をせず、入院診療に特化した全国的にも珍しい小児科が、福岡市にある。昨年4月に開院した福岡大西新病院(同市早良区、117床)。入院設備を持たない開業医や市急患診療センターなどで入院が必要とされた子どもたちを24時間365日、受け入れる。外来は地域の診療所に任せる「完全分業」システムは、入院患者に専念できるなど利点も大きく、小児科医不足に悩む地域のモデルとしても注目される。

 「2歳男児で高熱が続き、エックス線に肺炎の影が出ています」「分かりました。お待ちしています」-。開業医から西新病院に掛かってきた電話はすぐに小児科医のPHSに転送され、呼吸状態や検査結果についてやりとりが始まった。

 電話から30分後、男児が来院し「急性肺炎」と診断された。点滴や抗菌薬の投与を受け、順調に改善。1週間後に退院できた。

 西新病院は、福岡大(同市城南区)が市医師会から引き継いだ「成人病センター」を改称して開院。新設の小児科は15床で、専門医3人を中心に対応している。2018年度は計609人を受け入れた。

 患者は未就学児が大半で、9割以上は急性肺炎や急性胃腸炎などの感染症。呼吸不全や脱水症状があるなど、重症化していることが多い。小児科成育医療支援センター長の井上貴仁医師(51)は「入院に専念しているからこそ、迅速に受け入れられる」。

 入院後も急変しやすい子どもの症状に即応できる。長男(5)が入院していた女性(41)=同市早良区=は「熱が続く子なので、すぐ診てもらえる環境は安心だった」と振り返った。

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 福岡市立こども病院(239床)が14年11月、同市中央区唐人町から東区のアイランドシティに拡充移転した。これを機に、市西部の小児科の入院機能は大幅に縮小。「市西部の小児救急医療に貢献する目的もあった」と井上医師。

 18年度の患者の大半は市西部の医療機関の紹介という。徒歩圏内にある松本小児科医院は数十人を紹介し「こども病院移転後、小児科がある病院からは満床だと断られることも多かったので助かっている。退院後を見越して密に情報共有もできる」と歓迎する。

 小児科でも医師が都市部などに集中する偏在は深刻だ。厚生労働省が医師数や15歳未満の年少人口などから導き出した「医師偏在指標」(2月公表、暫定)によると、47都道府県で小児科医が最も足りている鳥取(173・8)、続く東京(142・4)に対し、最も不足しているのは茨城(78・3)だった。

 九州は、福岡14位(116・8)▽大分17位(114・9)▽長崎18位(114・3)▽佐賀23位(108・6)▽熊本26位(105・6)▽宮崎43位(85・2)▽鹿児島45位(82・7)。厚労省は、宮崎、鹿児島を含む下位16県を相対的に小児科医が少ない県として、医療機関の集約化など、十分な医療提供体制の確保に向けた施策を重点的に進めるよう、求めている。

 福岡地区小児科医会丹々会理事で、内田こどもクリニック(福岡市城南区)の内田智子院長は「外来は診療のほか、乳児健診や予防接種などで忙しい。研究や当直、若い医師の指導まで担うと、疲労もストレスもたまってしまう」と指摘。その上で「外来と入院を『分業』すれば医師個人の負担は減る。開業医としても24時間入院を受け入れる病院の存在は心強い。小児科で効率的に質の高い医療を提供するための非常に良いモデルケースになる」と期待する。

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