【日日是好日】慶應幼稚舎の子どもたち 羅漢寺住職 太田英華

西日本新聞 大分・日田玖珠版

 今年も心待ちしておりました、慶應(けいおう)幼稚舎6年生の子たちがやって来ました。16年目の「福沢先生の故郷を尋ねる旅」ですが、今年の参加者は41人と過去最多です。

 引率者を含め約50人もの団体でしたが、その到着に全く気が付かないほど静かで、落ち着いた空気を漂わせた登場でした。準備に慌ただしくしていた自分が恥ずかしくなったほどです。

 昨年の子たちは、剃髪(ていはつ)した女性のお坊さんに会ったことがなかったようです。終止ビックリマークの表情で、見ている私の方が楽しくなりました。「さあ今年は?」と、子どもたちの表情を探りましたが、事前に情報収集していたのか驚きはありません。むしろその分、真剣さがひしひしと伝わってきて一瞬で気が引き締まりました。

 私は皆さんの前でお話をするときは表情を拝見し、その雰囲気を感じながらお話しさせていただきます。特に子どもたちには、一人一人の目をしっかり見て、反応を確かめます。慶應幼稚舎の子たちは、福沢先生のお話をすると、より目が輝き始めるのが印象的です。

 私の法話は必ず「命」のことを問い掛けますが、今回もそうしました。すると、ある子がこう言いました。「寿命のことを考えると眠れなくなります。昨日も眠れませんでした」

 「それはいけない。考えすぎだよ。確かに皆いずれ亡くなりますが、大事なことは与えられたこの命を一生懸命生きる事で、目の前の事に常に真剣に向き合うことです。眠ることにも真剣に取り組まなければなりません」。私は答えました。そして純粋な目をしたその子の手を握り「ぐっすり眠れるよ」と告げると、あどけない笑顔になりました。

 もう1人が「命の大切さって何ですか」と尋ねてきました。「あなたの命はお父さん、おじいさんや、たくさんの命があって存在します。だから大切だし、必要なのです」と答えると、大きな真剣な目をしてしっかりうなずきました。「あなたは将来何になりたいの」と尋ねると、「警察官です」という答えでした。「もしかしたら、警察庁長官になったりするかもね」と言い添えると、彼はさらに真剣な表情でうなずきました。

 帰り際、最後に質問した子ら数人を、見せたいものがあると本堂前の池に連れて行きました。

 「あそこに1匹のフナが横たわっています。もう1カ月もあの状態ですが、生きています。泳げないけど生きています」と水面を指しました。おどけたり倦(う)んだりした顔をした子はいません。「どうか、人の痛みがわかる人でいてください」。そう申し上げると、皆も先生も、しっかりとうなずいてくださいました。

 将来、世界のどこかで活躍するであろう子たちと時間を共有し、私自身がまた多くを学び感動を頂きました。子どもたちとの再会がまた楽しみになりました。

【略歴】1967年、羅漢寺27世住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在、羅漢寺28世住職として寺を守る。

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