仲間のそば、黙々白球拾い 筑陽学園「ボールボーイ」吉永さん 出場かなわず…「一緒に戦う」

西日本新聞 社会面

作新学院戦でボールボーイを務めた筑陽学園の吉永大輝さん(中央) 拡大

作新学院戦でボールボーイを務めた筑陽学園の吉永大輝さん(中央)

 熱戦が続く甲子園のグラウンドで、仲間のそばにいながら声援を送ることもなく、黙々と試合を見つめる選手たちがいる。「ボールボーイ」。ファウルゾーンにボールが転がるたびにダッシュで拾う。そんなストイックなゲームの補助役とはいかなる存在なのか…。

 11日の作新学院戦。筑陽学園(福岡)のボールボーイ、吉永大輝さん(3年)は、仲間たちが九回裏同点に追いつきながら敗れるという接戦をベンチのすぐそばで無言で見守った。ボールボーイはチームを離れた第三者。声援はもちろんプレー中の感情表現も慎むべき立場だ。しかし仲間の反撃に思わずグラブを小さくたたいて喜んだ。「気持ちが高ぶってしまって…」。試合後、苦笑いを浮かべた。

 ボールボーイは内野に2人、外野に1人の3人ずつを一塁と三塁側に配置し対戦校同士で分担する。背番号はなく、水色ヘルメットで椅子に座り待機。主にファウルボールを拾うが一塁側は審判にボールやペットボトルを渡す作業も担う。

 導入の時期は不明だが、日本高野連の田名部和裕理事(73)によると、1930年代の決勝戦の映像に残っているという。以前は地元高校の野球部員が担当していたが、90年代に参加チームによる分担式に変更。「阪神大震災の影響で地元に頼めなくなったのでは」と田名部理事は推測する。

 担当の選抜法はチームで違う。12日に登場する海星(長崎)は、ベンチ入りに一歩及ばなかった期待の2年生に任せる。今回役割を担う広森眸透(まなと)さん(2年)は「ボールボーイはしっかりやりながら、間近で試合を見て、次は自分が試合に出るために必要なことを学びたい」と意気込む。

 一方、筑陽学園は練習の補助役などとして連れてきたベンチ外の部員に決めさせており、今回も希望者が前夜にじゃんけんで決めた。3年間で1度もメンバー入りできなかったという吉永さんは「ともに汗を流し、練習を手伝ってきたメンバーと少しでも一緒にいたい」との一心で志願した。「自分も甲子園でプレーしたかったな」。複雑な思いも抱えながら、激闘を見届けた。「自分のやるべき仕事はできた。みんなを助けられたはず」。涙交じりの表情には、選手に負けない達成感が垣間見えた。

PR

PR

注目のテーマ