京都の夏のバスツアー 「御大礼」ゆかりの地を巡る

西日本新聞 夕刊

 令和元年の今年。皇位継承に伴う「即位礼正殿の儀」(10月22日)や「大嘗祭(だいじょうさい)」(11月14、15日)は皇居で執り行われるが、昭和の時代までは、その場所は京都御所だった。今年は京都の寺社仏閣が世界遺産に登録されてから25年。二つの節目にちなみ、登録25年の世界遺産であり「京の御大礼」ゆかりの地でもある社寺を訪ねる夏限定のバスツアーに参加した。

 京都駅から午前10時に出発。まず向かったのは、日本に四つしかない「時の元号」をその名に持つ寺社仏閣の一つ。両側を緑に挟まれた「きぬかけの路」を通り抜けると、創建888(仁和4)年の仁和寺(京都市右京区)に到着する。元号を寺名にするには天皇からの公認が原則で、簡単には付けられないものだったという。

 ツアーならではの特別公開で中に入ることができた金堂(こんどう)は、現存最古の紫宸殿(ししんでん)として国宝に指定されている。金に輝く阿弥陀三尊像を拝観して厳かな空気を堪能した後は、ぜひ外に出て、屋根を見上げてほしい。獅子のような顔立ちをしたこわもての亀の上に「亀乗り仙人」と呼ばれる弘安仙人が立っている。この亀は、3千~4千年に一度しか水面に顔を出さないと伝えられた亀。その姿を3~4回見たという弘安は、長寿の象徴とされている。拝めば御利益がありそうだ。

 昼食は西陣魚新(同市上京区)へ。江戸末期に皇室御用達の酒造・しょうゆ商として始まり、1855(安政2)年から料理屋として皇室の食事に携わってきた。大正天皇、昭和天皇の大礼時(即位大饗(たいきょう)の宴)の料理をはじめ、平成の天皇即位の茶会も担うなど歴代天皇と関わりが深い。

 今回のツアーの昼食は、大正大礼時の献立を再現。鶴のニンジン、亀のタケノコなど細部に至るまで職人のこだわりが詰まっていて、参加者は口々に「かわいい」「食べるのがもったいない」。退位された上皇さまも京都に来られ、食事をされたという。

 昼食後は、京都で最も古い社といわれる上賀茂神社(同市北区)へ。緑に囲まれた広大な敷地、清流の静かなたたずまいに、心が浄化されるようだった。普段は入れない本殿と権殿に加え、通常は非公開となっている大嘗祭の勅使祭文などの御神宝を特別に見ることができた。ガイドの定者省人(じょうしゃあきと)さん(68)が「今しか見られない特別品ですよ」と強調しつつ説明してくれた。

 おやつ時の午後3時すぎ、1803(享和3)年創業の老舗、鶴屋吉信(同市上京区)で京抹茶と京菓子を味わった後は、最後の訪問先、下鴨神社(同市左京区)へ。縁結びや良縁に強い力があるといわれる相生社(あいおいのやしろ)の隣には、2本の木が途中から1本になって結ばれた御神木がある。この御神木、何と現在4代目なのだとか。必ず境内の糺(ただす)の森の神域に生まれるため「京の七不思議」と言われているそうだ。

 改元の年。歴代天皇や元号ゆかりの場所を巡り、改めて日本の伝統文化に目を向けてみてはいかがでしょうか。

 ●メモ

 京都定期観光バスの「京の御大礼と登録25周年・世界遺産めぐり」は京都駅発で毎日運行。9月30日まで。所要時間は約6時間半。料金は大人(中学生以上)9500円、小児6690円。問い合わせは京都定期観光バス予約センター=075(672)2100。

 ●寄り道=「金のふすま」と、あんどんの美

 「夜、金の秘密が見えてくる」-。これまでにない手法で夜間特別公開が行われていた京都市右京区の妙心寺春光院を訪ねた。

 江戸時代後期の画家、狩野永岳によって描かれた金のふすま絵を薄明かりのあんどんで照らし、当時の空間を再現。暗闇の中でふんわりと浮かび上がる金本来の美しさは、昼間には見ることができない光景だった。川上全龍副住職は「現代の照明では、金のふすま絵の真の美しさは体験できません」と語った。

 ※春光院の夜間特別公開は終了しました。

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