「NO安倍」だけじゃない怒り 韓国の抗議集会 文政権への不満含み

西日本新聞 国際面

 「安倍晋三政権は経済侵略を撤回せよ」。韓国で日本の植民地支配からの解放を祝う「光復節」の15日、ソウルの日本大使館の周辺はデモ参加者の怒声に包まれた。ほど近い光化門広場では今夏、炎天下の抗議集会が連日続いた。参加者の声に耳を傾けると、日本の対韓輸出規制強化に反発する心情は共通するものの、文在寅政権の対応への評価は支持と不支持が入り交じる。2年前、朴槿恵(パククネ)政権を退陣に追い込んだ「ろうそく集会」の延長上にあるとの見方もある民意のうねりは、どこへ向かうのか。 (ソウル池田郷)

 「韓国を植民地支配した加害者が、何を居直っているのか」。日本の対韓輸出規制強化について、デモに参加した会社員の趙〓坤(チョヨンゴン)さん(47)は語気を強めた。

 趙さんが行進したのは、「ろうそく集会」の拠点となった光化門広場。文政権の誕生を後押しした市民運動に「誇りを持っている」と話すが、無条件に文政権を支持するわけではない。

 一行は広場に面する米国大使館前で歩みを止めて叫んだ。「韓国軍のホルムズ海峡派遣に断固反対!」。米国の求めに応じ、ホルムズ海峡の安全確保を目指す有志連合に参加するのは反対だ。デモ隊には、南北融和を優先するため「米軍撤退」を訴えるプラカードを掲げる女性の姿もあった。

 星条旗が揺れる大使館周辺は警備車両と警察官が取り囲み、ものものしい空気が漂う。趙さんら革新系のデモ隊と保守系のデモ隊がすれ違った。保守系の年配男女が韓国の国旗を突き上げ、趙さんらに「共産主義者め。それでも韓国国民か」と罵声を浴びせると、しばらく両者の激しい言葉の応酬が続いた。

 13日に取材した保守系団体の集会会場には、「ノー安倍政権」のプラカードが揺れていた。北朝鮮の脅威を強調し、元々は日米韓の同盟関係を重視する団体だが、今回の日本の措置には反発が強い。

 釜山市から参加した自営業の朴柱宣(パクジュソン)さん(56)も日本の輸出規制に反対だが、文政権の対応は感情的だと感じてもいる。来夏の東京五輪に合わせ日本行きを計画していたが「韓日の友好関係を望むが、今の雰囲気のままでは日本に行きにくい」と声を潜めた。

 14日、慰安婦問題を象徴する少女像が置かれた日本大使館前での集会は、若い世代の姿が目立った。教え子と参加した中学教師の李■京(イヘギョン)さん(38)は、植民地時代の歴史を学ぶため「生徒たちには明るく元気に集会に参加するよう指導している」と話した。

 軍事政権下の1980年代に民主化運動の最前線にいた大学教授は「ろうそく集会を経験した韓国の民意は多様化した。安倍政権への怒りがどこに向かうかは予想しにくい」と話す。

 少女像の近くの集会ではアップテンポな音楽が流れ、若者たちがリズムに合わせて体を揺らす様子は、Kポップ歌手のライブ会場のようだった。李さんは教え子たちの姿に目を細め、言葉をつないだ。「私たちには忘れることができない歴史があったことは事実。日本人はその歴史を記憶し続けるべきだ」

※〓は「王へん」に「容」

※■は「りっしんべん」に「恵」

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