「ひきこもり学」24歳語る 経験、心情…笑い交え講演 「居場所ある社会に」

西日本新聞 社会面

ショートコントを交えながら、引きこもり当事者の思いを紹介する桂木大輝さん=7月23日、大分市 拡大

ショートコントを交えながら、引きこもり当事者の思いを紹介する桂木大輝さん=7月23日、大分市

 かつて学校に行けず、自宅に引きこもった経験を、ユーモアを交えて発信する若者がいる。引きこもり当事者ならではの心境を打ち明け、社会の偏見を拭おうと講演を続ける桂木大輝さん(24)=福岡市西区。当事者が実名で語る「ひきこもり学」と銘打ち、引きこもりの苦しさやトラウマ(心的外傷)への向き合い方などを伝えている。

 「おじちゃんもADHD(注意欠陥多動性障害)なの? ぼくはADHDだから多動で、つい、いっぱい話しちゃうんだ」

 7月下旬、大分市の会議室。発達障害者や引きこもりの人々の交流会で、桂木さんがオリジナルのコントを披露した。ネタには、引きこもり当事者が抱えやすい心の問題や日々の悩みを盛り込む。コミカルな動きが会場の笑いを誘う。

 「お笑いにすれば、嫌なことも気楽に伝えられる。引きこもりのことを知らない人にも、興味を持ってもらいやすい」

 交流会は月1回、大分市の発達障害者でつくるグループ「居場所~特性を生かす道~」(佐藤尚美代表)が開いている。桂木さんは2月から広報担当として、交流会や講演会で自らの過去を語っている。

 幼少期から「自分は人と感覚が違う」と自覚していたという桂木さん。学校になじめず、いじめや教師への不信感を引き金に高校2年で不登校となった。数カ月、自宅に引きこもり、外に出るようになっても人の視線を怖がった。その間、哲学書を読みあさり、自分の性格や境遇、将来の姿をひたすら考えたという。

 「引きこもりって暗いイメージがあるけど、実は自分と徹底的に向き合えるメリットもある」。不安になるたび、心情をノートに書き出し、客観的に見るようにした。

 病院では、アスペルガー症候群やADHDの診断を受けた。適応指導教室に通って高校を卒業、新しい気持ちでやり直そうと大学に進学したものの「ほとんど引きこもっていた」。卒業後に進んだ就職先にもなじめず、1週間で退社した。

 転機は昨秋。東南アジアを1カ月ほど一人旅をし、言語も宗教も違う人々が自由に生きる多国籍社会を目の当たりにした。「他人の目は気にせず、自分のやりたいことをやろう」。吹っ切れた思いだった。

 昨今、加害者が引きこもりだったとされる事件が続き、「危険な存在」と偏見の目を向ける人がいる。引きこもり期間が続くと、「周囲に迷惑を掛けている」と恐縮するが、なかなか本心を言えず、親と衝突してしまいがちだという。

 桂木さんは、当事者を孤立させないことが大切だと訴える。「当事者はマイナス思考になりがちだけど、肯定してくれる人がいれば安心する。周囲がしっかり支えて、僕みたいな人が自分の居場所を見つけられる社会になってほしい」

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