日韓関係 「負の連鎖」脱する道探れ

西日本新聞 オピニオン面

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は15日、日本の植民地支配からの解放を記念する光復節の演説で「日本が対話と協力の道へ向かうなら、われわれは喜んで手を結ぶ」と述べ、日韓関係改善に向けた対話を日本側に呼び掛けた。

 文大統領は、日本による輸出規制強化問題については「不当な規制に立ち向かう」と強調したものの、戦後補償問題では日本の努力にも言及した。総じて日本批判を抑制した印象だ。

 日本政府が輸出管理上の優遇対象国から韓国を除外する決定をした今月2日、文大統領は「加害者の日本が大口をたたくような状況を決して座視しない」などと日本を厳しく批判していた。ここへきて対日姿勢に微妙な変化がうかがえる。

 背景にあるのは、苦境にある韓国経済の立て直しを急ぐ文大統領が抱える事情だ。輸出規制強化で韓国製造業は部品や素材の調達に不安が出ており、国内の動揺を抑える狙いがある。

 同時に、これまで厳しい対日姿勢で一部世論の支持を集めてきた文大統領にしても、日韓対立がこれ以上エスカレートするのはリスクが大き過ぎるとの判断が働いたのではないか。

 この変化は基本的に評価できる。文大統領は懸案の元徴用工訴訟問題で具体的な解決策を提示しておらず、関係改善の本気度はまだ判定できないものの、さらなる悪化を回避しようという意思は垣間見えるからだ。

 日本側もこの機をとらえ、少なくとも日韓関係をコントロール可能な状態に戻すために、適切な手を打つべきである。日韓両政府ともに、対抗措置が対抗措置を呼び、対立の戦線が拡大していく「負の連鎖」から抜け出す道を模索してほしい。

 そのためにはまず、双方の政権が率先して、自国の世論の沈静化を図る必要がある。

 国民の間に相手国への反感が広がっている時、強硬論をぶつ政権は世論の支持を得ることができる。しかし世論が制御不能なまでに過熱すれば、政権は世論の「弱腰」批判を恐れ、対立収拾に踏み込めなくなる。そのリスクを認識する必要がある。

 日韓双方の政治家は、たとえ相手国の政権を批判するときでも、国民感情まで傷つける品のない言葉遣いは慎むよう心掛けるべきだ。同時に、政治が対立している今だからこそ、地方や民間レベルの交流が重要だとの明確なメッセージを発してほしい。そうすれば日韓の当局が落ち着いて対話する環境が整う。

 こじれきった関係の改善には時間がかかるだろうが、不毛な対抗措置の応酬は双方の傷を広げるだけだ。いたずらに感情的にならず、対立を脱する「出口」を理性的に探すべきである。

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