反発の声 分裂するも弱まらず 麻生晴一郎氏

西日本新聞 オピニオン面

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ルポライター 麻生晴一郎氏

◆香港デモ

 6月以来続く香港のデモは、空港も一時閉鎖されるなど、収拾する気配を見せない。

 デモが長期化しているという言い方を目にするが、むしろ2014年に雨傘デモが起きてからの4年半の間、大きなデモが起きなかったことの方が不思議だと考えるべきかもしれない。それぐらい、特に若い人たちの中国に対する反発は強まっている。筆者も香港の大学に行くたびに、中国人留学生のグループが孤立する姿を目にしてきた。

 だが、香港市民の中国に対する反発は、ここ数年は既存の民主化運動を弱める働きもした。香港には中国政府寄りの立場を取る親中派がある。これに対しメディアや市民活動の基層を成す民主派は、香港から中国の民主化を求めていく考え方で運動の主流であった。一方、本土派という集団に代表される若い人を中心とした中国への反発は、中国の国情を問わず、中国の進出から自分たちの“本土”香港を守ろうとする潮流を台頭させた。一部の若者は、民主化運動のシンボル的な存在だった6・4天安門事件の追悼集会などを疑問視し、中国人観光客に暴言を浴びせるなどの排外的な活動も見られた。

 「本土派の人が中国を排除しようとするのが現実的だとは思えない。でも、毎年同じように天安門事件の追悼集会をやることが意味あるとも思えない」(香港市民の大学院生)のような意見を、筆者は多くの一般市民から聞かされた。従来の民主化運動は勢力を弱め、他方で若い人が独自に反中国的なデモを行うものの一般市民の大きな関心を呼ばなかったのが、ここ数年間の状況だったと言える。

 以上のように、中国に対する市民の反発の声は分裂していたのだと言え、弱まっていたわけではない。もしも中国政府の意を受けた香港の政府・警察が強引に中国化を進める状況になれば、反発の声は一体化していく。今回、中国本土への容疑者の引き渡しが可能となる逃亡犯条例の改正案をめぐる香港政府の一連の動きが、まさにそれである。

 つまり香港のデモは起こるべくして起きたのである。したがって今後、今のような大規模なデモが続くかどうかは、中国政府の出方や一般市民の支持といった要素によっても変わるが、中国に対する反発が弱まるまでは、少なくともなくなるということはないと考えている。

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 麻生晴一郎(あそう・せいいちろう) ルポライター 1966年生まれ、北九州市出身。中国の農村問題、市民活動などを取材・執筆する。2013年に「中国の草の根を探して」で第1回潮アジア・太平洋ノンフィクション賞を受賞。

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